空間の使い方が良い~カクシンハン・プロデュース『シン・タイタス REBORN』

 カクシンハン・プロデュース『シン・タイタス REBORN』を見てきた。川口のOKS_CAMPUSの倉庫での上演である。

 二層くらいの枠に入っている…というか、大枠として子ども(松下颯汰)に『タイタス・アンドロニカス』のお話をしてあげるというのがまずあり(子どもに聞かせるにはてんでふさわしくない話なのだが、そこはいろいろ工夫して、あまり暴力度を下げずにうまくやっている)、この子には「カラスと呼ばれる男」なる超自然的な感じの存在(大山大輔)が付き添っている。さらにその劇中に詩人の語り部(三遊亭遊かり)が出てきて説明してくれたりもする。大変残虐な話なので、こうした枠組みを使って物語じたいを少し引いたところから相対化するような形になっている。

 何しろハコが大きな倉庫なので、音響はあんまり良くないのだが(それでもこういう建築物にしてはかなり音声はよくやっているほうである)、それを補って余りあるダイナミックな空間の使い方をしている。真ん中に即席の奈落を備え付けた台があり、主な舞台はそこである。大きい移動できるラックみたいなのを使って役者が入退場し、『タイタス・アンドロニカス』の上演の際に問題になる穴もこのラックみたいなものと即席の奈落を組み合わせてやっている。凱旋するタイタス一行は後方の搬入口から「TITUS」というナンバープレートがついたトラックで入ってくる。ラヴィニア(春名風花)の傷口から赤い布が出てくる演出は定番なのだが、終盤からはタイタス(山井綱雄)がそれに色調をあわせて赤い連獅子みたいなかぶりものをつけて出てきて、能の動きを参考にした所作で静かに復讐を行う。劇場ではないスペースを上手に生かしつつ、序盤の突然車が入ってくるというようなエネルギッシュな動きと、終盤の能のような静かな動きを対比させた飽きない演出だった。