南極で心温まる映画~『バーナデット ママは行方不明』(ネタバレあり)

 リチャード・リンクレイター監督『バーナデット ママは行方不明』を見てきた。アメリカでは2019年公開だったらしいのだが、日本ではやっとこのたび公開だそうである。

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 バーナデット(ケイト・ブランシェット)は将来を嘱望された建築家だったが、心血を注いで作った家の計画が潰えた後、シアトルの歴史的建造物に家族と引っ込んで暮らしていた。バーナデットの挙動が不審なので夫のエルジービリー・クラダップ)は精神科医に相談し、バーナデットを入院させようとする。怒ったバーナデットは家出し、もともと行く予定だった南極の家族旅行に1人で旅立つ。

 好みは分かれそうだが、個人的にはものすごく好きな映画である。『ター』みたいないかにもアカデミー賞取りに行きますぞ!みたいな映画よりも、私はこういうリラックスした作品でパニクったり突然元気になったりしているケイト・ブランシェットを見ているほうが好きだ。バーナデットがかなり人間嫌いな鬼才タイプで、そのせいでご近所とトラブルが起き、さらには夫エルジーからも理解されなくなって(女性からすると新しいアシスタントの意図は見え見えなのだが気付いていない)、療養所に入れられそうに…というのは古典的な精神疾患を悪用した女性抑圧のプロットで、今でもこんなふうにこの古いプロットが使えるんだな…と思った。バーナデットがどういうわけだか不倶戴天の敵だったはずの隣人オードリー(クリステン・ウィグ)に助けてもらうことになって…というあたり、私好みの大人の女優が2人で「お互い全然好きではないがどうも理解できるところがあって困る」みたいな雰囲気を上手に醸し出しており、ちょっと強引な展開だとは思うものの、見ていてものすごく面白かった。最後のオチも明るいし、脇で出てくるローレンス・フィッシュバーンジュディ・グリアなどもいいし、建築物のデザインも綺麗だし、楽しい心温まる映画だったと思う。