そんなに好みではなかった~『父は憶えている』(試写)

 アクタン・アリム・クバト監督『父は憶えている』を試写で見た。キルギス映画である。

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 ロシアに出稼ぎに行った後、23年間行方知れずだったザールク(アクタン・アリム・クバト)が村に戻ってくるところから始まる。記憶もなく、話もしないザールクを息子たちは迎え入れようとするものの、ザールクはゴミ集めなどをするばかりであまり行動は要領を得ない。さらにザールクの妻ウムスナイ(タアライカン・アバゾヴァ)は既に他の男性と再婚していた。

 23年間ザールクが行方不明で、帰ってきてからもいろいろ要領を得ない行動を…というのは、たぶんこの20年ほどで中央アジアの暮らしや政情がずいぶん変わったのでそれについていくのが大変だという人々の心情を象徴的に表しているのだろうと思う。ロシアがウクライナを侵略したこととザールクが帰ってきたことが(今までの仕事がなくなったとか、強制的に徴兵されそうになって逃亡したとか…)、何か関係あるのかも…などと考えるとちょっと面白い。しかしながらウムスナイに対する現在の夫の夫婦間性暴力の描写とかが、まあリアルといえばリアルなのだろうがけっこう暴力的なのになんとなく最後は「家族愛の話」としてまとまってしまうところなどはあんまりピンとこなかった。