プロパガンダ映画かと思いきや、終盤はアメリカの政策批判~『コヴェナント 約束の救出』(試写、ネタバレあり)

 ガイ・リッチー監督の新作『コヴェナント 約束の救出』を試写で見た。

www.youtube.com

 アフガニスタンに駐留している米軍軍人ジョン・キンリー(ジェイク・ジレンホール)は、タリバンの武器庫や爆弾工場を探す部隊を率いていた。現地語通訳として、頑固な性格だが能力はピカイチのアーメッド(ダール・サリム)を雇う。部隊は捜査の末にタリバンの工場を発見するが戦闘になり、キンリーとアーメッド以外全員が殺害されてしまう。負傷して動けなくなったキンリーをアーメッドが100キロも運んで生還させるが、このせいでアーメッドは地元で有名になってしまい、タリバンに命を狙われて潜伏せざるを得なくなる。アメリカで負傷から回復したキンリーは、命の恩人であるアーメッドを助けないといけないと思ってアフガニスタンに戻ることを決意する。

 実話の映画化ではないのだが、いろいろな実際に起こった話をもとに作った脚本だと思われ、戦争描写はけっこうリアルである。ガイ・リッチーの映画とは思えないほど真面目で笑うところが少なく、リッチーらしいユーモア(+やたらイケメンを美しく撮りたがる趣味)が見受けられるのはキンリーがアーメッドの兄弟に青い眼がきれいだと褒めるところ他、数カ所程度だ。ただ、あまりじめじめしたところがなくカラっとしていて、中盤の逃避行や救出がスリリングでしっかりエンタテイメントらしいのはリッチーの特徴が出ていると思う。

 序盤はキンリー率いるアメリカ軍の捜査チームの活躍を描いており、本当にガイ・リッチーの映画かと心配になるくらい戦争プロパガンダっぽい。基本的にテロ準備をしているタリバンの工場や倉庫を捜査するのが仕事なので警察スリラーみたいな感じで、治安を乱す犯罪者を取り締まるヒーローっぽく描かれている。しかしながら終盤はけっこう直球でアメリカの占領政策を批判しており、米軍が通訳などアフガニスタンの現地で雇用した軍属スタッフをきちんと保護していないことをけっこう手厳しく追求している。たぶん描きたいポイントはここなのだろうと思うし、そこはたしかに政策として非常に一貫性がなく人権侵害でもあると思うのだが、ここでキンリーとアーメッドの救出を手伝うPMCのトップであるパーカー(アントニー・スター)がけっこういい人みたいに描かれているところなどはちょっと引っかかる。映画としては面白いが、米軍やPMCを甘く描きすぎている気はする。