人種やクィアな側面にも切り込んだドキュメンタリー~『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』(試写)

 『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』を試写で見た。リトル・リチャードの業績に関するドキュメンタリーである。

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 人種差別や黒人文化、リトル・リチャードのクィアセクシュアリティなどにもちゃんと切り込んだドキュメンタリーである。ロックが黒人音楽を基盤にして生み出されたものであり、リトル・リチャードはそうした動きの先駆者だが、メインストリームのテレビなどでは黒人ミュージシャンの曲を白人に歌わせていたので黒人ミュージシャンの業績がなかなか正当に評価されなかったというのは今となってはみんな知っていることであり、そのあたりをきちんとわかりやすく描いている。どちらかというとコントロヴァーシャルなのはセクシュアリティについてで、リトル・リチャードは自分がゲイあるいはバイセクシュアルであることを全く隠しておらず、トランスジェンダーショーガールだったサー・レイディ・ジャヴァなどと若い頃から親しかったのだが、信仰などのこともあって自分のセクシュアリティについてはいろいろ割り切れないことがあり、いかにもゲイらしく振る舞ったり、ゲイなのを否定したり、いろいろな心境の揺れがあったらしいことがわかる。本人に都合の悪いスキャンダルなどはけっこう省かれているとは思うのだが、リトル・リチャードの業績を知る上ではわかりやすいドキュメンタリーである。