今の作品みたい~ダムタイプ『S/N』(配信)

 ダムタイプ『S/N』を配信で見た。初演の後にHIV感染関連の疾患で死去した古橋悌二が中心になって作った舞台である。非常に有名な作品だが、見たのは初めてである。

normalscreen.org

 1994年初演ということだが、今の作品だと言われてもおかしくないくらい古くなっていない。構成としてはゲイの男性(耳の聞こえない男性やアメリカ系で日本に住んでいる黒人男性、HIV陽性の男性など、いろいろなアイデンティティのゲイ男性が出てくるが、それだけに還元されているわけではない)やセックスワーカーの女性などが出てきて性愛などについていろんな話をするようなドキュメンタリー演劇っぽいセクションと、コンテンポラリーダンスっぽいセクションなどが組み合わされて作られている。ドキュメンタリー演劇の部分は今でもふつうにありそうで、とくに「セックスワーク」という言葉の説明から始まるあたりはいまだに全然、状況が変わっていないと思った。HIVについての危機感は90年代特有のものなのだろうが、語り方は今でも通用するようなものである。最後にブブ・ド・ラ・マドレーヌがストリップティーズふうに体内から万国旗を出すところは最近のバーレスクでもありそうなパフォーマンスだ。照明の点滅を使ってアニメーションみたいな効果を出すやり方は最近の舞台ではけっこう飽きるほど見かけるもので、このへんが流行りの原点だったのか…と思った。全体的に「どっかで見たな」と思うようなところが多く、たぶん私は知らないうちにこれに影響を受けた作品をすごくたくさん見ているのだろうと思う。