男性ストリップクラブのドキュメンタリー…と思いきや、突如実録犯罪ものに〜『ラ・ベア マッチョに恋して』

 『マジック・マイク』に出演していたジョー・マンガニエロが監督したドキュメンタリー映画ラ・ベア マッチョに恋して』を見てきた。テキサス州ダラスの男性ストリップクラブ、ラ・ベアで働くダンサーたちの様子をとらえた作品だ。

 前半は正攻法のドキュメンタリー映画で、若干のユーモアをまじえつつ、真面目にダンサーにインタビューしたりショーの様子を撮ったりしている。ダンサーは皆個性豊かで、30年以上もダンサーとして活躍し、若手のトレーニングも担当しているストイックなランディ(通称マスターブラスター)から、『マジック・マイク』に憧れてこの世界に入ったというチャニング(芸名がこれとは、影響受けすぎだろう)まで、皆キャラが立っている。ランディは健康と筋肉を保つために酒も煙草もやらない生活をしているそうだし、ダンサーの中には子育てを頑張っている家庭的な男性もいる一方、モテまくりのプレイボーイもいる…のだが、ラ・ベアは自分の健康管理がきちんとできるビジネスマン/ダンサーを育てるのがモットーなので、ドラッグや酒浸りなどについては避けるようけっこう強く指導しているらしい。ファンの女性も何人かインタビューされており、曾祖母から孫まで5代で店に来る一家もいるそうだ(テキサスだし、若いうちに母親になったのかな?)。
 しかしながら終盤、いきなり実録犯罪物語みたいになってビックリする。店にはベネズエラ系のアンジェロというトップスターがいたのだが、ある日突然射殺され、しかもダラス司法が腐敗してて犯人が無罪放免になったらしい。店で痴漢行為を働いた男をこらしめたところ、相手の男(ホプキンズという名前)が麻薬の売人か何かで逆恨みされ、そのせいで撃たれたそうだ。ダンサーたちの説明によると、ホプキンズと本格的にモメていた相手はアンジェロではなく、アンジェロはまるで巻き添えみたいな形で死んでしまったらしい。ホプキンズは暴力の前歴があるのに車に銃を積んで走り回っていたそうで、映画の中でもそんなことが可能なのは法律上おかしいと指摘されていた。ホプキンズは警察に情報を運ぶ仕事をしていたのでお目こぼしがあったのではないか、そしてストリッパーだからまともに捜査してもらえなかったのではないかというのがダンサーたちの見解で、全くひどいものだと思った。

 そういうわけで、ストリップティーズとかバーレスクとかに興味がある人はもちろん、アメリカの銃社会っぷりに興味がある人とかも十分面白いと思う。「マッチョに恋して」という副題からは想像がつかないような展開になるのでちょっとタイトルがお客さんを遠ざけている気もする。映画館はがら空きだったが、大変オススメだ。