剣の場面がいい~東京芸術劇場『マクベス』

 東京芸術劇場でノゾエ征爾演出『マクベス』を見た。劇団はえぎわと彩の国さいたま芸術劇場の共同企画である。

 木の椅子が床いっぱいに整然と並べられているステージでの上演である。灰色が基調で四角いマークが入った独特の衣装が使われている。魔女役の役者などは1人で複数の役をつとめている。

 序盤はいまいち流れが良くないような気もしたのだが、マクベス(内田健司)が幻想の剣を見るところの演出がとても良かった。魔女が剣を持って入って、マクベスが摑もうとすると別の魔女にとられて、ちょっとマクベスが剣に触れたと思ったらまたとられて…というような動きが続く。マクベスが剣を持てたかと思うと、魔女のひとりが剣に水のような液体をかけて剣が黒っぽくなり、マクベスにはそれが血に見える。それ以降も血が黒い液体で表されていて、マクベス夫妻は手を洗ってもほとんどこの黒い液体が手から落ちない。マクベス夫妻には自分の手が血に染まっているのが常に意識の中にあるはずなので、これはちょっと面白い。この見える/見えないの境界を思い切りマクベス夫妻の主観で「見える」ほうに振っているのはいいと思う。

 ただ、テクストをかなりカットしているわりに、新しく入れたものがあんまり面白くないというところがある。序盤の二の腕に関する冗談は全く面白くない…というかダンカンがマクベス夫人にセクハラしてマクベス夫人がそれを受け入れるだけなので、ここは何をしたかったのかよくわからない。原作にない冗談はほとんどいらないのではと思った。あと、マクダフ一家が殺害されるところで加川良の「教訓I」が歌われるのは、それここで歌う歌か…?とかなり疑問に思った。