現代風に辛辣なオーウェルの翻案~『動物農場』

 オクスフォードのクリエイション・シアターによる『動物農場』を見てきた。サマータウンユナイテッド改革教会での上演である。オーストラリアのヴァン・バダムによる翻案で、ヘレン・イーストマン演出である。

 後ろにスクリーンがあり、その前にはいろんなスローガンを書いた紙などが貼られたシンプルな舞台で、場面転換するかわりにスクリーンにいろいろな映像などを映して処理している。役者は4人だけで、ブタ鼻とか耳とかをつけかえていろんな役をとっかえひっかえやる。映像には地元の人たちなども出演しているようだ。

 動物農場のメンバーがテレビに出たりウェブで広報活動をやっていたりする以外、話は小説とほぼ変わってないのだが、完全に現代の話になっており、ブタのナポレオンはスターリンではなくトランプである。ナポレオンはプロパガンダツイッターとおぼしきSNSに投稿し続けていたり、"Make Animal Farm Great"と書かれた赤い帽子をかぶった人たちに応援してもらっていたりするし、見た目もデカくて図々しい現代の政治家だ。ナポレオンがスピーチする時はイヌ部隊のイヌが銃を持って教会の通廊をうろつき、お客さんに銃を向けるので(私も向けられた)けっこう怖い。スクリーンに映し出されるプロパガンダCMとかテレビのインタビュー番組、抗議活動のネット中継などは全て今よく見かけるような感じのもので、動物農場メンバーが都合が悪いことがあるとなんでもフェイクニュース呼ばわりして逃げようとする。明らかにソ連全体主義的傾向を諷刺しているはずの『動物農場』がこれだけ現代的で辛辣な政治諷刺ものになるのは驚いたし、あまりお金もかかっていない小規模なプロダクションなのにスピーディな演出でちゃんと作品の力を引き出しているにも感心した。