リッチモンド座、モスクワシティバレエ『白鳥の湖』

 この間の『ロミオとジュリエット』がイマイチだったのにもめげず、再びリッチモンド座でモスクワシティバレエの『白鳥の湖』を見た。生でオリジナル版『白鳥の湖』の舞台を見るのは初めて。

 オケが相変わらずひどいのはなんとかしてほしいものだが、それ以外は今回のほうが全然よかったように思う。二日前の『ロミオとジュリエット』の時は舞台の狭さを扱いかねてて踊り手がせせこましいところにひしめいてるみたいな感じに見えたのだが、今日は踊り手がみんな舞台の大きさに慣れたのか、たくさん踊り手が出てくるところもそんなに場所に余裕がないという印象を受けなかった。前回同様、初めのほうはちょっと調子が出なくて退屈な気もしたが、道化役(派手な格好でコミカルに踊る)が活躍するあたりからなんかもうやたらキャンプというかど派手なレビューショーみたいな感じになって、どんどん客も踊り手も楽しい雰囲気に。宮廷の虚飾を描いたギンギンギラギラの第一幕とは対照的に白鳥が出てくる第二幕はとても哀切で、メリハリがはっきりしているのもいい。チャイコフスキーの音楽がもうそれはそれはロマンティックだし、踊りも見せ場がいっぱいあるし、さすがよくできた古典だなーという気がした。

 あと、白鳥役のバレリーナの踊りが本当に鳥っぽくて関心した。玉三郎の鷺娘にはかなわんかもしれんけど、優雅なのに獣じみた動きが非常に美しい。ただ、玉三郎の鷺娘に比べると、今日見た『白鳥の湖』の白鳥はちょっと弱々しすぎる気が…たぶん全編通して落ち着きなく震える動きが取り入れられているせいだと思うのだが、あれって非常に頭も身体も弱いみたいな印象を与えるよね。

 ちなみにうち、なんとなくしかストーリーを知らないまま見たので、魔法使いの役で出てきたダンサーが非常にやせていて中性的で妖しい魅力を放っていたので、最初てっきり魔女なんだと思っていた。ところがふとタイツに眼をやるともこっとしていたのでそこでやっとたぶん魔女じゃなく魔男(?)なんだと気付いて結構な衝撃が…すこしの事にも先達はあらまほしきことなり。まあでも魔法使いの人の踊りはすごく妖艶で良かった。

 しかし、オケは前よりさらに悪くなっていた気が…前回は管楽器だけ失敗してたと思うのだが、今日は管楽器のみならずチェロもヴァイオリンもソロで音を外すという悲惨なことに。テンポが速いところでは全く管楽器と弦楽器があわなくなったり、踊り手のほうもあんなんじゃとても踊りにくかっただろうと思う。もっとうまい楽団で見てみたいものだと思ったので、また別のカンパニーの『白鳥の湖』を見に行くかも。夏までにロンドン市内で少なくとも二つの劇場で同じ演目やるみたいだし、少しバレエを勉強するのもいいかもしれないと思う。