ストラトフォード(5)暗くて暴力的な『ロミオとジュリエット』

 スコット・ウェントワース演出『ロミオとジュリエット』を見た。

 フェスティバルシアターのバルコニーがある張出舞台を使った上演で、とにかくこの劇場は張出部分がすごく客席になじんでいるのが上演空間として魅力的だ。舞台はけっこうシンプルで、もともとの構造を生かしている。衣装はルネサンスふうのものだ。

 プロローグを言う口上役が、丸いランプを持った女たちに伴われて何度も出てくるのが演出としては変わっている。全体としてはかなり暗くて暴力的で、冒頭のケンカでは一般人の女性が巻き込まれて怪我するし、女性に対する抑圧がひどいことがいろいろ細かく示され、これがジュリエットに対する強制結婚の要請につながる。ロミオもジュリエットもむら気な十代の若者で、突発的な行動をとる。

 いろいろ面白いところもたくさんあったのだが、個人的には暴力ばかりでちょっと色気が足りないのがよくないと思った。ロミオとジュリエットがはじめて夜を過ごして別れる場面ですら、2人とも完全にちゃんと服を着ていて、親密さがよくわからない。ロミオ(アントワン・イアド)は出てきた瞬間から人好きのする若者で良かったのだが、ジュリエット(セイラ・ファーブ)は明るすぎるというか、明るい時はいいんだけどとくに前半、悲しむ場面でちょっと感情のレンジが足りないと思った。