若い役者を起用した『ロミオとジュリエット』翻案~R+J(配信)

 カナダのストラトフォード・フェスティバルが配信した『R+J』を見た。ラヴィ・ジェイン、クリスティン・ホーン、アレックス・バルマーによる『ロミオとジュリエット』の翻案で、ジェインは演出し、バルマーはローレンス修道士役で出演もしている。

www.stratfordfestival.ca

 『ロミオとジュリエット』をローレンス修道士視点からいろいろな後悔の念を持って回想するという枠に入っている。ローレンス修道士を演じるバルマーは目が見えないアーティストで、プロダクション全体が視覚障害を持つ人向けに設定されている。最初に役者全員が出てきて列を作って並び、誰が誰だか見分けやすいよう、人物紹介がある。ここでそれぞれの役者が身長、髪の色、民族、どの役を演じる時は何色の服を着ているとか(二役を演じる役者もいるのでそれぞれの役について説明する)、子どもや視力の弱い観客でもすぐわかるよう説明する(「肌色はティム・ホートンズのダブルダブルの色です」みたいなカナダのご当地ネタもある)。これは目が悪い観客のみならず、あまり芝居を見慣れていない人や子どもなどにも役立つので、他のプロダクションでもどんどんやったらいいのではと思った。屋外に設置された現代の部屋のセットが舞台で、お話は1時間25分くらいにカットされている。

 ジュリエット役のエポニーヌ・リーはまだ14歳、ロミオ役のダンテ・ジャモットは21歳だそうで、ものすごく若いカップルである。リーは14歳でまだほとんど子役みたいな年齢だというのに大変上手でびっくりした。ジャモットもまだ十代くらいに見えるのだが、そうは言ってもちょっと大学に入ったくらいの青年と中学生がつきあってるみたいな感じには見えるので、正直、ロミオ役もまだ十代の役者を起用したほうがよかったのではという気がする。また、おおむね台詞回しは良いのだが、途中でロミオとジュリエットソネット形式で話すところを歌にするのは、なんだか急に学校演劇みたいになってしまうのであんまり良くないと思った。

 ローレンス修道士視点の枠に入れるというのは発想としては悪くないのだが、私は個人的な好みとして『ロミオとジュリエット』というのは徹底的に若者中心の話にすべきではないかと思っているので、大人の回想にしてしまうとちょっと面白さが減るようには思った。あと、やはり1時間25分くらいだとけっこう短い。全体的に新型コロナウイルス流行が終わったばかりの上演でいろいろ制約があるところを頑張って作った作品だとは思うし、つまらないわけではないのだが、ちょっとダイジェスト版っぽい感じがするのは否めない。