『ロミオとジュリエット』2本立て(2)ジュリアン・レステル版『ロミオとジュリエット』

 Marquee TVでジュリアン・レステル振付『ロミオとジュリエット』を見た。音楽はプロコフィエフのものを使っている。2014年に収録されたものである。

www.marquee.tv

 お話のほうはけっこうカットされており、ふつうのプロダクションだと残しておくような箇所も削られたりしている。ほとんど何もないセットにプロジェクションのわりと凝った背景を使ったもので、人の影が強調された照明プランになっており、たまにダンサーだけではなく影絵が踊っているかのような効果が出るように演出されている。場面によってはジュリエット(ファニー・フィアット)のドレスなどにプロジェクションの色が映るのが効果的だ。衣装はわりとみんな華やかな感じだが、男性陣はタイツではなくすらっとしたズボンを履いており、多少現代的だ。

 全体的に若者同士の敵意と情愛が剥き出しになっている感じで、あまり明るいところや笑うところはない、真面目で悲劇的なプロダクションだという印象を受けた。ケンカの場面はスピード感のあるダンスで敵意が示されるし、ロミオ(ジュリアン・レステル)とジュリエットの恋心はかなりエロティックに表現されている。キャピュレット夫人がかなり若いことも特徴で、たぶんキャピュレット夫人(マリア・ステファニア・ディ=レンツォ)もジュリエット同様強制結婚させられたのかなという印象を受けた。修道士の格好で顔を隠した人物が出てくるのだが、これも半分死神、半分ローレンス修道士みたいな感じで、助けてくれる優しい大人とはかけ離れている。