デューク・オブ・ヨーク劇場で『ロミオとジュリエット』を見てきた。ジェイミー・ロイド演出で、トム・ホランドとフランチェスカ・アメウダ・リヴァーズ主演の公演である。
現代的な衣装で行う公演で、セットはかなりミニマルだし、照明も暗めである。それでこの暗めな雰囲気が問題で、演出については全くいいと思わなかった。全体的に会話の場面でも人間同士がちゃんとお互いのほうを見ていないなどあまりしっかりコンタクトしないタイプの演出で、冷たくドライでダークである。ジェイミー・ロイドはこれを『シラノ・ド・ベルジュラック』でもやっていて、『シラノ』はもともとコミュニケーションがきちんと効いていないことについての芝居なのでそれはそれでうまくいっていたと思うのだが、『ロミオとジュリエット』はコンタクトしてはいけないところで若者同士が激しくコンタクトすることについての芝居なので、こういうコンタクトを避けるアプローチでできるとはあまり思えないし、全然うまくいっていないと思う(なんと若者同士で斬り合う殺陣もほぼ無い)。カナダのドラマ『スリングズ・アンド・アロウズ』で演出家のダレンが全然『ロミオとジュリエット』のうまい演出プランを考えられず、ロミオもジュリエットもヘンな衣装を着て前向いてしゃべるだけみたいな演出をして周りから心配され、結局やめるというくだりがあるのだが、その失敗版演出をちょっと思い出してしまった。
そんな中でも役者はけっこう頑張っていたと思う。キャストはけっこう少なく、キャピュレット夫人など、カットされている役もある。トム・ホランドのロミオはとにかく表情が豊かだし、またマキューシオが死んでしまうあたりではロミオがものすごい怒りをこめて話しており、トム・ホランドにこんな声が出せると思っていなかったので少し驚いた。ジュリエット役のフランチェスカも台詞回しがいちいち気が利いており、思わぬところでユーモアを発揮して笑わせてくれるし、悲しいところとのメリハリがある。また、乳母役のフリーマ・アジェマン(『ドクター・フー』シリーズのマーサ)を初めて舞台で見たのだが、ジュリエットのことを心から心配しているお姉さんのような乳母で、ジュリエットにパリスとの結婚を心ならずもすすめるあたりは内心に隠したつらい気持ちが見えるような演技で大変よかった。