もうちょっと単純でまとまりのある展開にしたほうが…『ブルー きみは大丈夫』(ネタバレ注意)

 ジョン・クラシンスキ監督の新作『ブルー きみは大丈夫』を見てきた。 

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 小さい子どもの想像上の友達であるイマジナリー・フレンドが題材のファンタジー映画である。12歳のビー(ケイリー・フレミング)は母親を亡くし、父親(ジョン・クラシンスキ)も心臓の手術を受けるということで、おばあちゃんマーガレット(フィオナ・ショー)のアパートでしばらく暮らすことになる。いろいろ不安で寂しいビーはある日あやしい生き物を目撃する。その生き物ブロッサム(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)とブルー(スティーヴ・カレル)はイマジナリー・フレンドで、ビーには他の子どもが作ったイマジナリー・フレンドが見えることがわかる。同じくイマジナリー・フレンドが見えて、行き場を失ったイマジナリー・フレンドのマッチングサービスをやっているというカル(ライアン・レイノルズ)と組み、ビーはイマジナリー・フレンドの第二の人生を探すお仕事を始める。

 発想は大変いいと思うし、雰囲気も良く、子どもが大人になるプロセスや物語の重要性、喪失にどうやって対応するかというようなテーマにしっかり向き合った作品である。子役のフレミングも大変上手だし、イマジナリー・フレンドの声を担当するやたら豪華な声優陣もいい。クラシンスキはもともとホラーが得意だということもあり、私が大好きな『キャット・ピープルの呪い』にちょっと雰囲気が似ているので個人的にはけっこう楽しめた…のだが、脚本はけっこうまとまりが無いと思う。

 まず、序盤のビーがおばあちゃんの家に引っ越してくるところじたいからけっこうわちゃわちゃしている気がした。ビーはもともとおばあちゃんの家にあたるアパートに住んでいた…のだが、なんかまた引っ越してくるというつながりになっており、お母さんが亡くなってからその時点までにビーがどこに住んでいてどういう暮らしをしていたのかとかについて、簡単なものでいいのでもう少しセリフでの説明があったほうがいい気がする。とくにこれは子どもも見る映画なんで、大人は見ているうちにわかるが子どもにはこの立ち上がりは早すぎてちょっとわかりにくいのじゃないだろうかと思った。

 その後も、イマジナリー・フレンドがもともと一緒にいた子どもが大人になってから再会するプロセスがわかりにくい気がする。再会して相手とつながったのにまたイマジナリー・フレンドがケアホームに戻ってきたり(なんで再会した相手の家にとどまらないの?)、どういう理屈で何が起こっているのか、よく考えると矛盾している気がする。まあ、このあたりは子どもの想像力の産物ということで、ツッコミを入れてもしょうがないのかもしれないが…

 なお、原題はIF(「もしも」とImaginary Friendの頭文字を引っかけている)だが、日本語タイトルはあんまりイケてないと思う。というのも、ブルーは大きい役ではあるのだが、本作におけるキーとなるキャラクターっていうわけでもないと思うからである。別にこれはビーとブルーの交流をメインに描いた話とかではない。さらに「きみは大丈夫」みたいな内容でもない。むしろ大丈夫でないのが当然だ、みたいな話ではないかと思う。

 なお、全く関係ないのだが、ビーが病院で友達になる男の子の名前がベン(アラン・キム)である。私は先週もビーとベンという男女が主役の映画を見たのだが、何か世の中には急な『から騒ぎ』ブームでも来ているのだろうか…(まあこの映画は全くの偶然だと思うが)。