新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

まさかの『国宝』展開~『ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』(試写)

 『ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』を試写で見た。12月のリサイタルの曲も入っているというできたてほやほやの作品である。

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 日本で大人気で日本に家もあるスタニスラフ・ブーニンに関するドキュメンタリーである。若い頃にショパンコンクールで一世を風靡するが、芸術家にとって自由のないロシアにいづらくなって亡命し、その後は病気で手が麻痺した上、骨折と糖尿病のせいで足切断の瀬戸際まで追い込まれる。足を切るとペダルが踏めなくなるので足は温存したい…ということで、結局切断は免れるのだが、足の長さが短くなってしまう。最初にブーニンがでかいヒールのついた靴を履いて出てくるのだが、これは病気で大手術をして片足が短くなったからである…ということがわかるようになっている。

 そういうわけでものすごい苦労をして、病気を克服してピアノが弾けるようになってコンサートを再開…というところは非常に感心するのだが、一方で若い頃のショパンコンクールの演奏に比べると、この作品に収録されている復活後のコンサートの演奏はだいぶ見劣り(聞き劣りか)するとは思う。大病の影響による体力の衰えはやはりぬぐいがたい。あと、若い頃のショパン演奏はすごく上手いのだが、けっこう個性的…というか、テンポ感などがあまり伝統的ではない感じの解釈で弾いていたんだなと思った(私は18歳までピアノをやっていて、一時は音大を受けて楽理をやろうかと思っていたくらいはクラシック音楽が好きだったのだが、子どもの頃に「お手本」として聞いていたようなショパンとはなんとなく違う感じがする)。日本でめちゃくちゃ人気があったらしいのだが、あまりクラシック音楽の伝統的解釈とかを気にしない国だからウケたんだろうか…しかしながら去年の『国宝』でも糖尿病で足を切断するせいで芸歴が途絶えるみたいな話があったのだが、このところの芸道映画では糖尿病の恐ろしさを訴えるものが多くて、まあ悲惨な話ではあるが、ある意味では啓蒙的ではあるのかな…と思う。