イギリスで一番使えねースパイが帰ってきた!Johnny English Reborn『ジョニー・イングリッシュ・リボーン』〜とりあえず女王陛下が生きてるうちにスパイ映画を作っとかないとな(注意:本日のエントリには下品な表現が含まれます)

 たぶん日本で公開時には50人くらいしか見てなくてその一割はうちの知り合いであろうと思われるイギリスのスパイコメディ、『ジョニー・イングリッシュ』の誰も期待していなかった続編『ジョニー・イングリッシュ・リボーン』が公開されたので早速見てきた。主演はもちろん前作同様ローワン・アトキンソン(『Mr.ビーン』のあの彼である)。相変わらず期待どおりにひどくて素晴らしい。


 とりあえずあらすじを書いておくと、ジョニーは前作の後モザンビークでの大統領警護任務に大失敗し(大統領は暗殺)、MI7をクビになってチベットの山々で武術の修行をしていた(この修行は「弱点を強くする」ものらしいのだが、なんか股間に石をヒモでぶらさげて引っ張って歩く修行をひたすらやってて、これが後で効いてくるという全くどうしようもない…)。ところが中国の首相と英国首相との会談に警備上の不安があるということでジョニーがMI7に呼び戻される。どうやらVortexという殺し屋組織が中国首相の暗殺を企んでいるらしく、ジョニーと新しい部下のタッカー(こいつは優秀)がチームを組み、心理学者ケイト(ロザムンド・パイク)の助けを受けて任務に当たるが、相変わらずジョニーはアホな失敗ばかりで…という話。


 とりあえずしょっぱなから「それチベットかよ…」というようないいかげんなチベットぶりがツッコミを誘うし、途中でジョニーが香港の若くて俊敏な殺し屋を"chimp"と読んだりするあたりはアジア人的にひっかからないでもなかったのだが(たぶん「ヒヨッ子め」程度の意味で人種差別的なコノテーションはないのだろうが)、まあ全編あいかわらずゆるーいギャグとローワン・アトキンソンの顔芸で強引に持っていってしまうので何度もお腹を抱えて笑った。しかし完全にナンセンスギャグだった前作よりもプロットはよく作ってあるような気がしたのだが…まあもちろんこういう話にプロットのつじつまを期待するのははなから無理なので、「そのセキュリティはねーだろ!」「なんで香港って言ったのにマカオにいるんだよ!」みたいなツッコミは始終必要であるのだが。


 まあしかしこのシリーズの特徴はやっぱりギャグが超イギリスクォリティなところである。ジョニーが久しぶりにMI7に復帰したらMI7が「Toshiba British Intelligence」(東芝英国情報局)になっており、"Spying for you"とかいうモットーを掲げて民間向けスパイ業務?の提供をしているというギャグがあるのだが、これは政府の予算カットと民営化を皮肉っている。あと相変わらず女王陛下のいじられ方がひどく、前作では英国国民よりも飼い犬を優先する女王陛下が描かれていたのだが今回はご本人がボコられる憂き目にあっている(?!)。それでこういうギャグに限ってイギリス人はよく笑うようで、館内爆笑だった。


 しかしながらこういうスパイものはやっぱりそのいじられる女王陛下がいるから存在するのであって、エリザベスが亡くなってチャールズが英国国王になったらスパイものは作られなくなるんじゃないかという予感がしている。「女王陛下の007」だと貴婦人に仕える騎士みたいな感じでカッコいいが「国王陛下の007」だとどうもただの権力をかさに来ている国家公務員みたいだし、ジョニー・イングリッシュみたいな女王をいじるスパイ映画が面白いのは英連邦のボスとして広く尊敬されている今の女王の権威をコケにするからであって、あまり尊敬されてないチャールズが王になったらかえってコケにしがいがないのではという気がする。『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』も最近リメイクされて人気らしいのだが、やはり今のうちに女王陛下のスパイものを作っておこうという商機があるんだろうか。


 ちなみに『ジョニー・イングリッシュ・リボーン』はかなりロンドンの街中で撮影してるみたいで、レスタースクエアそばの小道とか普段通ってる道が結構出ていた。自分の住んでる近くが映画に出てきたりするとついつい点が甘くなってしまうところもあるな…


 おまけ:前作のテーマ曲。ムダにかっこいいロビィ・ウィリアムズの歌である。

 前作で一番面白かった「歯磨きしながらアバにあわせて踊るジョニー」