家族推しのファミリー映画〜『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(ネタバレあり)

 『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』を見てきた。ティム・バートン監督作『アリス・イン・ワンダーランド』の続編だが、今回のバートンは監督のみ。

 話は前作の最後に船乗りになったアリス(ミア・ワシコウスカ)が航海から帰還するところからはじまる。ところがヘイミシュの差し金でアリスと母は船を手放すよう迫られる。八方ふさがりのアリスのところにワンダーランドから呼び出しがかかり、アリスは鏡を抜けてハッター(ジョニー・デップ)を救いに…
 
 話はほとんど原作のアリスシリーズとは関係なく、おなじみのキャラクターが出てくるだけで後は完全に新しいストーリーの時間SFである。ワンダーランドではお互い家族でもなんでもない別の種族に属する人たちが新しい共同体を作ってお茶会をやっているところであり、前作はそういうところに少々クィアな雰囲気が感じられたのだが、この作品では逆にやたら家族の絆が強調されており、なんかほんっとふつうのファミリー映画という感じだ。ハッターが家族を恋しがって病気になっていたり、ミラーナ(アン・ハサウェイ)とイラスベス(ヘレナ・ボナム=カーター)が仲直りしたり、アリスと母が最後に協力してヘイミシュと戦ったり、徹頭徹尾ご家族映画で終わる。とくにムチャクチャつまらないというわけではないが、たいして面白い映画でもなかったと思う。

 ミア・ワシコウスカは相変わらずいいし、あとスティーヴン・フライ演じるチェシャ猫はあいかわらずふわっふわで(もふりたい)、子猫時代に消えるのに失敗するという小ネタはウケた。アブソレムがアラン・リックマンの声で話すところを聞くと非常に悲しい気持ちになる(これが遺作になってしまったのか…)。ピンクの主題歌"Just Like Fire"も悪くない。あと、ベクデル・テストはミラーナとイラスベスの会話で普通にパスする。


↓こちらがピンクの"Just Like Fire"のビデオ。ブッチィで不良娘みたいなアリスをはじめとしてワンダーランドの登場人物をひとりで複数演じ、いつものエアリアルトリックもいっぱい出てくるし、最後にひねりもあってなかなか面白い。