RSCロンドン公演難破三部作(1)『十二夜』〜セットなどはいいとこもあるけどちょっとイマイチかなぁ

 ロンドンに戻ってもまたRSCということで、ラウンドハウスで実施中の難破三部作のひとつめ、デイヴィッド・ファー演出の『十二夜』を観劇。

 とりあえずセットはすごくいい。現代(21世紀にしてはちょっといろいろレトロなのでたぶん20世紀だが)のホテルのロビーをモチーフに、左奥には実際に昇降し入退場に使用できるエレヴェータ、右奥に斜めに建てつけたベッド。右前方はホテルのフロントと回転ドア、左前方は水をはって池にしており、ここを海という設定にして中からヴァイオラやセバスチャンがびしょ濡れで入場してきたりする。真ん中は椅子やチェスボードが置いてあるがけっこう広くてパフォーマンススペースとして使用できる。あとラウンドハウスは額縁舞台じゃなくエリザベス朝ふうの円形劇場なので、前方中央の張り出しているところを長くのばして花道みたいにしており、ここからも役者が入退場できる。

 そういうわけでセットはとてもいいのだが、ちょっとキャスティングと笑いのとり方に疑問が…。全体的に主役の恋人たちはオリヴィアをのぞいてあまり笑いをとりにいってない気がした。ガーディアンの劇評にもあるのだが、とりあえずセバスチャンとヴァイオラの身長が違いすぎ、双子の取り替えに説得力がない上2人が舞台に並んだ時の見栄えがあまり良くないのが問題。ヴァイオラ役のエミリー・タフェが超小柄でセバスチャンと身長がつりあってないし、あととても子供っぽくて(本当に少年みたい)あまりオリヴィアが惚れるカッコいい若者には見えなかったような気がする。あとオーシーノがちょっと陰が薄いかもしれない。フェステ(ケヴィン・マクモナグル)がなんかすごく変わっていて、まるでホテルに雇われてるスタンダップコメディアンみたいなスーツ姿で登場するのだが、これが道化かと思うとちょっと…

 フェステがあまり面白くないので、お笑いはどっちかというとオリヴィアとマルヴォーリオに偏っている。オリヴィア(カースティ・ブッシェル)はストレートな可愛さでは2009年のアレクサンドラ・ギルブレスに負けると思うのだが、ブッシェルはセットがホテルというのもあって前半とても有能な女性経営者みたいな感じで登場するので、後半男装したヴァイオラに一目惚れししっかりしたビジネスウーマンがついホロリと…みたいなところはメリハリがあってこれはこれで実によろしいと思う(最後までとても頭良さそうな感じである一方、可愛いところやコミカルなところをナチュラルに出してしまう感じが喜劇的)。あとジョナサン・スリンガーのマルヴォーリオが大変おかしくて、えらい猥褻な格好で出てくる黄色のストッキングの場面では近くに座っていた校外学習の中学生たちが大喜びしていた。もちろん着ている服自体がおかしいのだが、微妙な身振りや台詞回しがその服のヘンっぷりを絶妙に際立たせていてお腹がよじれるほど笑った。

 そういうわけで『十二夜』はちょっとイマイチなとこもあるかなぁと思ったのだが、マルヴォーリオが素晴らしかったスリンガーが『テンペスト』ではプロスペローをやるらしいので楽しみ。あと二作は来週中に見に行く予定。