今年見た舞台は92本だったらしい(ただしフェスティヴァルで見たやつとか数え方がちょっとあやしいのだが)。これから新作を見に行くことはなさそうなので打ち止めとして本日今年のベスト&ワーストを発表。
○ベスト
1.ヤングヴィック『三人姉妹』(ベネディクト・アンドルーズ演出)
もう全編「うわあああああ」と言い続けるしかない舞台。エネルギッシュでしっちゃかめっちゃかに動きまくる役者にニルヴァーナの楽曲を使用するというラディカルにアップデートした演出にもかかわらず(というかそのせいで)もとの戯曲のものすごい残虐性が浮き彫りになってしまって見ていて痛々しいのなんの。チェーホフは人のいやがることをすすんでします!
2.アポロ座、オールメール『十二夜』
マーク・ライランスがオリヴィア役でスティーヴン・フライがマルヴォーリオという至福のキャスティング。とにかく笑える!
3. Heaven、ゲイ版『ドン・ジョヴァンニ』
とりあえず初めて見たパブオペラでかなり衝撃的だった。あと主役のダンカン・ロックがほんとに魅力的で…
4. マシュー・ボーン版『眠れる森の美女』
やっぱりマシュー・ボーンの世界初演ということでとにかく興奮したし、プロダクションの質のほうもいつも高くてほんとボーンはすごいなぁと思った。
5. ナショナルシアター『アテネのタイモン』
マルクスがこの戯曲を褒めたわけがようやくわかった。出来の悪い戯曲だと思ってたけど間違いだったわ…
6. キングズヘッド座、東ベルリン版『トスカ』
カネがないのを逆手にとってトスカを壁崩壊前のベルリンにうつして意図的に貧乏くさくしたスキャンダラスな翻案。批評が賛否両論になったのだが、あまりオペラ慣れしていない私はすごく面白かったと思う。
7. チャリング・クロス座『ラ・ボエーム』
再演なのだが、これまた現代のロンドンに設定をうつして上手に翻案したパブオペラだった。
8. アルメイダ座、イラン版『ベルナルダ・アルバの家』
ロルカの古典的戯曲をうまいことイランに移し替えたパワフルな作品。
9. ロンドンコロシアム座、ケープタウンオペラ『ポーギーとベス』
アパルトヘイト時代のソウェトに舞台を移した演出で、これまた見応えがある。
10. クンステン演劇祭、リミニ・プロトコル『ラゴス・ビジネス・エンジェルズ』
みんな大好きリミニ・プロトコル。相当な問題作だと思った。
あと、ベスト演技賞は『ユダの接吻』のルパート・エヴェレットに。まるでオスカー・ワイルドの私生活をのぞいてるような気分になってしまうようなナチュラルな演技ぶりがすごかった…ちょっと薄気味悪いレベル。
○ワースト3
最近、あまりにもつまらない芝居は途中で出ることにしているのだが、最後まで見たものの中で最低だったのは
1. 『ロック・オヴ・エイジズ』
初演じゃないから外そうかと思ったのだがとにかくこれはひどい。驚いたことに映画のほうがかなりマシになっている。
2. リヴァーサイドスタジオ『トロイラスとクレシダ』
差別的に聞こえるのはわかっているが、「まったくもう、アメリカ人ときたら…」と言いたくなる。ごくごく一部のアメリカ人にしかわからんものをそのまんま持ってきて口汚いロンドンの観客の前でやってもそりゃ無理だろう。
2. 『ヴィヴァ・フォーエヴァー』
これもたいがいひどかったな。
あと、これと関係なく、今年一番個人的に感動した演劇的催しはグラインドボーン音楽祭の『妖精女王』。これがカネか…これが文化か…これが階級か…とびっくりし続けた。
それから一番の心残りは、ぼんやりしてるうちにリミニのロンドン公演『100%ロンドン』が終わっていたこと。これはひそかにショックでした。