Sherril Dodds, Dancing on the Canon: Embodiments of Value in Popular Dance

Sherril Dodds, Dancing on the Canon: Embodiments of Value in Popular Dance (Palgrave Macmillan, 2011)を読んだ。

Dancing on the Canon: Embodiments of Value in Popular Dance
Sherril Dodds
Palgrave Macmillan
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 これは社会学的に「ポピュラーダンス」における価値の概念を分析するというものなのだが、最近読んだ他の社会学系の本と同様、最初の半分がひたすら「価値」に関する理論についての議論でそこだけでもう一般のダンスファンはあきらめるだろうと思う。まずそもそも「ポピュラーダンス」というのは何なのかっていうところから定義しないといけないわけで、これはvernacular danceとか呼ぶ人もいるそうなのだが、まあなんていうかハイカルチャーに分類されないポピュラーカルチャーのダンスっていうことである。

 後半はそれぞれニュー・バーレスクのコミュニティ、パンク、ヘヴィメタル、スカのコミュニティの比較、ロンドン郊外のカリビアン向けダンスクラブの調査からなるもので、ここは比較的わかりやすいのだが、結構専門家向けに書かれている感じでちょっとかなり詰め込みすぎな気が…とくにパンク、ヘヴィメタル、スカのところはこの三つ比較するだけで本が一冊書けるようなところをすごい勢いで説明するので、パンクやヘヴィメタルはともかくスカに全く疎い私はちんぷんかんぷんなところが多かった(そもそも踊り方が記述から想像できない)。ニュー・バーレスクのコミュニティについての調査はかなり行き届いたものだと思ったのだが、一方で「価値」を話題にしているわりには振り付けに払う注意がちょっと足りないような気もしてそこが少し不満だった。最後のロンドン郊外の中年以上の大人を対象としたカリビアン向けダンスクラブの定期的ダンスイベントに関する章は大変面白く、移民の文化とかどうやってダンスジャンルのクロスオーヴァーが起こるかとか、かなり示唆的だ。

 全体的には面白いところもたくさんあるのだが初学者にはかなり読みにくい本だった。あと、うちダンスとかを扱った本のやたらたくさん章頭に引用があるスタイルがなんか気取ってるような気がして好きじゃ無いんだけど、まあこれはうちの好みなのでしょうがない。