『ブルージャスミン』〜もう一回『欲望という名の電車』やればいいだけじゃん

 忘れないうちに、飛行機で見た映画のレビューを書いておこうと思う。まずウディ・アレンの『ブルージャスミン』で、これは行きの飛行機で見たのでアレンの性犯罪疑惑が再注目される前だったのだが、見た瞬間からなんで今時こんな映画を作る必要が…というくらいつまらないと思った。

 基本的に話は『欲望という名の電車』の焼き直しで、富裕な夫と離婚して苦境にあるポッシュなジャスミン(ケイト・ブランシェット)がサンフランシスコに住んでいるワーキングクラスの妹ジンジャー(サリー・ホーキンズ)を頼ってくるが、新しい生活になじめないジャスミンはいろいろ失敗して…という話を、ジャスミンと前夫がどうやって別れたかという過去と並行させて描くというものである。時系列をバラして謎解きっぽくしているあたりは工夫があると思うのだが、経済格差が主要な社会問題のひとつになっていてかつ女性の人生というのも多様化している2014年に、こんなオシャレな金持ち女が仕事にもつけなくてひたすら失敗する(+ワーキングクラスの妹もなんかちょっと…)みたいな話を見ていていったい何が面白いんだっていう感じで私はちっともいいと思わなかった。

 まず、ジャスミンとジンジャーの描き方が非常に容赦ないというか、この二人のしょうもない転落を心の底では楽しんでいるみたいな冷酷さがある。ジャスミンは保身のためにウソばかりついている夢見る女で、非常に見ていてイラつくところがある。一方で姉よりは現実的そうに見えるジンジャーも実はろくでもない男とばっかり付き合っていて、最後全く救済されているようには見えない(ああいうDV男予備軍みたいなのとよりを戻すとかあり得ないでしょ)。私、はっきり言って『真夜中のパリ』の主人公の婚約者の描写みたいな露骨なミソジニー的表現よりも、こういう「一見女性を理想化しているようで実はしようもない女が失敗するのを見るのが好き」みたいな映画のほうがミソジニーがわかりにくい(+根深い)ぶんずっとたちが悪いと思うんだが…

 『欲望という名の電車』くらい徹底的に「人の嫌がることを進んでやる」んならそこそこ面白みもあると思うのだが、『ブルージャスミン』は『欲望という名の電車』レベルにつきつめて人生の醜悪さを描くとかいうものではなくかなり薄まっているので、しようもない女が二人出てきてがやがやしているだけの時代遅れな映画に見えてしまった。これなら『欲望という名の電車』をもういっぺんリメイクしたほうが全然面白いと思う。

 まあ、面白いのはブランシェットはオーストラリア人、ホーキンズは英国人だっていうことで、これ非常にアメリカ的な話だと思うのだが主演女優は二人ともアメリカ人ではない。『欲望という名の電車』の映画版も主演は英国人のヴィヴィアン・リーだったのを考えると何かちょっと示唆的なものを感じるな…