マッド技術者じいさん大爆破!〜『100歳の華麗なる冒険』(ネタバレあり)

 スウェーデン映画『100歳の華麗なる冒険』を見てきた。

 これ、予告に比べてもかなりぶっ飛んだ内容で、100歳のおじいさんが出てくるからといってハートウォーミングな話を想像してはいけない。主人公は100歳の誕生日に老人ホームを脱走したアラン。実はアランは爆破マニアの技術者で、若い頃に爆破実験の失敗で人を殺して精神病院に入った後(ここで優生学者に去勢されるというひどいめにあう)、大人になってからは爆破をさせてくれるところならどの陣営にでもついていって爆破をするとんでもねえ野郎であった。今でもその無茶苦茶ぶりは健在で、たまたま不良に「見ててくれ」と押しつけられた荷物を持ってバスでトンズラしてしまう…のだが、停車した先でであったユリウスと鞄をあけてみたところ、なんとその中には大金が入っていた。ところが警察に届けるでもなく休んでいたユリウスとアランは鞄を取り返しにきた不良に襲われてしまう…のだが、反撃してひょんなことから相手を殺してしまう。死人が出たのに悪びれず死体を捨てに出かけ、出かけた先で万年学生のベニーや象を飼ってる女性グニラなども巻き込んで、全く役に立たないぼんくらな警察と大金目当てのギャングどもとの三つどもえの死闘(?)が展開される。これにアランが若い頃、爆破やらスパイやらいろいろヤバいことに手を染めていたという話がフラッシュバックで挿入される。

 この映画、基本的にまともな判断力を持った登場人物はひとりも登場しない。人を殺しても平然としているアランやユリウスはもちろん、ベニーやグニラもなんかちょっとおかしいし、ギャングどもは暴力的だし、警察は鈍すぎだ。とくにアランの良心の欠如ぶりたるや大変なもので、爆破など自分が面白いと思うことができそうであれば原爆開発だろうがスペイン人民戦線だろうがフランコ政権だろうがソ連だろうが、どの側にでも全くひるむことなくついていって、兵器開発やら暗殺の原因になるようなヤバい情報の取引やら、人が死ぬようなことをやりまくっても気にしていないようだ。ここまで良心が欠如しているとむしろ清々しく、マッド技術者じじい大爆発!みたいな感じのハチャメチャなブラックユーモア映画として楽しめる。アラン役のロバート・グスタフソンはスウェーデンのマーク・ゲイティスみたいな感じで、このマッドじいさんアランをひょうひょうとした愛嬌を持って演じている。

 またまた全体のタッチもオフビートですぐ人が死んだり大事件が起こったりするわりには淡々としており、内容と語り口のギャップにおかしみがある。100歳のおじいさんの映画だというのにギャグのセンスは中学生レベルで、やたら立ちションをテーマにした下ネタがあるのは、あれは原作のセンスなのか映画製作チームのセンスなのか…とにかく立ちションの場面がやたら多く、スウェーデン人は外で立ち小便する習慣でも持っているんだろうかと思ってしまった(←よくない誤解)。

 と、いうことで、良心のカケラもないぶっとび映画を見たい人にこそおすすめの映画である。学位取得できない万年学生のベニーが象を飼ってるグニラと恋に落ちるあたり、ポスドクにとっても心が安まる映画に違いない。そういえば、途中で出てきたマジパンのケーキはどうなったんだろうか…