ジェシー・アイゼンバーグが全開だが、オチが甘すぎ~The Spoils(ネタバレあり)

 ジェシー・アイゼンバーグが台本を書き、主演しているThe Spoilsをトラファルガー・スタジオで見てきた。演出はスコット・エリオットである。登場人物は5人しか出てこないのだが、私が行った日はベン(ジェシー・アイゼンバーグ)のルームメイト、カリヤンの役がクナル・ネイヤーじゃなく代役のサガー・ラディアだった。

 ユダヤ系のベンはニューヨークで親のすねをかじりながら素敵なアパートに住んでいる自称映画監督。ネパールから来て、真面目にビジネススクールで学位取得を目指しているカリヤンをルームメイトにしているが、カリヤンは家賃を払っていないらしい。ベンは精神不安定で、最初はいろいろな意味で駄々っ子みたいにかなりカリヤンに甘えて暮らしている。カリヤンにはレシュマ(アンナプルナ・スリラム)というインド系だがアメリカ育ちの医師志望の彼女がいる。ある日、ベンは子どもの頃の友人テッド(アルフィー・アレン)と出会い、アレンが自分の初恋の人であるサラ(ケイディ・ブレイベン)と結婚する予定であることを知る。サラを諦めきれないベンは2人を家に招くが…

 ベンは人種差別主義者で性差別主義者でワガママと自己中がひどく、大変イヤな奴なのだが、ジェシー・アイゼンバーグ自身にものすごく愛嬌があるので、ひどい人なのにどうも憎めない感じがする。とくに序盤でカリヤンに頼りまくってソファでぺたぺたくっついたりするあたりは実にコミカルで愛らしく見える。凄い早口でセリフをしゃべるのだが、映画で見る時よりも滑舌がはっきりしていて生き生きしてるように見えた。

 セリフは全体的にとても気が利いている。とんでもなく失礼なベンはもちろん、ちりばめられている冗談は笑えるし、真面目なテッドが「女の子はワルが好きみたいに見えるかもしれないけど結局最後に勝つのは僕らみたいな男だ」とカリヤンに言うあたりの展開なども面白かった。
 
 ただ、終盤かなり展開が甘くて強引になるのが良くない。嘘で固めてサラに求愛し、腹いせにカリヤンにこれまた嘘をついてあたって親友にも見放され、もうダメが…となるのだが、なんと最後にサラとテッドが戻ってきてベンを慰めてくれて終わりなのである。この前にベンはサラに対して非常にひどい態度をとっているので、サラがいくらいい人でも戻ってくるというのはあり得ないと思うので、展開が強引すぎるし、ちょっと甘ったるく見える。この終盤のあたりはセリフもそこまで気が利いておらず、若干もたつきも感じられた。もうちょっとベンに冷たく現実を突きつけるようなビターな終わり方にしたほうが面白かっただろうと思った。