『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：リミックス』を見てきた。なんでこんなダサい邦題にしたのか意味わかんない(『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーvol.2』のほうがずっとカッコいいし、わかりやすいでしょ)。
前作に引き続きチームで戦うガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー(ただしグルートは赤ん坊のベイビー・グルート)。ロケット(ブラッドリー・クーパー)がソヴリン人から電池を盗んだせいでまた追われる羽目になり、近くの惑星に不時着。そこにピーター(クリス・プラット)の生き別れになっていた父エゴ(カート・ラッセル)が現れる。エゴは自分の惑星を持っており、神のような創造の力を持つ天人で、ピーターを招待する。ピーター、ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、ドラックス(デイヴ・バウティスタ)はエゴの惑星に向かい、ロケットとベビー・グルート(ヴィン・ディーゼル)、捕虜になっているガモーラの妹ネビュラ(カレン・ギラン)は船の修理のためとどまることにする。ところがソヴリン人から依頼を受けたヨンドゥの一味がロケットたちを襲撃。一方でエゴも息子を利用しようと…
前作同様、オフビートなユーモアに切れの良いアクション、センスのいい音楽の使い方で見せる作品である。ただ、今回はお話がどこの昼メロにも負けないような銀河を股にかけたご家族メロドラマになっていて、個人的にはむしろ前作より好みだ。主筋はピーターと父の関係で、ピーターは実父と再会できて大喜びなのだが、一方でエゴが母メレディスを殺したこと、自分を利用しようとしていることを知って大ショックを受け、母のため実父エゴに復讐するというギリシャ悲劇をひっくり返してメロドラマ風に味付けしたみたいな展開になっている。エゴは名前じたいが示しているように肥大したエゴで自らの子を食らう暴力的な悪しき父性の象徴だ。一方でピーターが大事にしているウォークマンや音楽は優しい心を養う母の情愛の象徴で、ピーターは暴力的な父を殺すことを選んだ(英雄になるための試練である)。ちなみにこの展開、潜在意識で働くイドの怪物により娘の幸福を破壊しようとする父親を主人公にした1956年の古典SF『禁断の惑星』にソックリだと思うのだが(ロボットのロビーのかわりにエンパスのマンティスが出てくる)、50年代の精神分析まっしくらだった『禁断の惑星』よりはあんまりフロイトっぽくないモダンな感じになっている気がする。
一方でピーターの育ての親で、前作ではピーターに対してかなりひどい態度をとっていたヨンドゥはだんだんそのことを後悔するようになり、血のつながりは無いが手塩にかけて育てたピーターに対して父らしく身を犠牲にして助けようとする。さらにヨンドゥがピーターを育てることになった意外な事情も明かされる。ピーターが最後に「僕の本当のお父さんはヨンドゥだけだ」と言うところは泣ける展開である。最後に「心で戦う」というやり方をピーターに教えたのもヨンドゥだ。ちょっとうがった見方をすると、これはおそらくアメリカにいっぱいいる養子を育ていている大人たちに対する、完璧でなくても最低限、自分の理念を守って子どものことを考えていればいい親になれますよ、というメッセージなのかもと思った。
脇筋はガモーラとネビュラの姉妹のライバル心である。この姉妹のライバル関係というのはどちらが強いかとか互いに対する思いやりとかをめぐるもので、2人とも養父サノスの虐待を恨んでいるのだがなかなか協力しあうことができない。一応、この2人の関係は互いに暴力的に殺し合う段階よりは穏健になったので、今後の作品でもっと2人の関係が深く描かれるところを期待したいところである。ちなみにネビュラが「金をためて親父を殺す」と恨み満々で宣言するとクラグリン(ショーン・ガン)が「金できれいな装身具でも買うのかと…」とビビるところは、若い女性に対するステレオタイプな見方を茶化していてちょっと面白かった。なお、ベクデル・テストはおそらく最初のアイシャ(エリザベス・デビッキ)とガモーラのネビュラに関する会話でパスするし、ガモーラとネビュラの会話なんかでもパスしそうなところがいくつかある。
ちなみに、この映画におけるフリートウッド・マックの"The Chain"の使い方は個人的に超ツボであった。あと、私はルッキング・グラスの「ブランディ」が甘ったるくて嫌いなんだけど、あんなことがあった後ではピーターは一生、「ブランディ」を聞きたくなくなっただろうと思うのでいい気味である(ひどいな私)。
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