ちょっと真面目すぎて工夫不足〜グローブ座『リア王』

 グローブ座でナンシー・メックラー演出『リア王』を見てきた。

全体としては現代の衣装を用いた上演だ。進入禁止になっている空き家を劇団がスクォッティングするところから始まる『リア王』で、ホームレスになることが大きなモチーフになっている…のだが、最後にこの枠を閉じる演出が無いので、ちょっと肩すかし感がある。さらに全体として「貧しさ」を強調するためか非常に静かな演出で、抑えすぎではと思うところも多かった。少なくとも最初のリア王が王国分割を行うところは、ゴミでもいいからもっとセットをごちゃごちゃしたものにしたほうがよかったのではという気がする。全体的には真面目でしっかりしたプロダクションで、そんなに悪くはなかったのだが、イマイチ静かすぎて盛り上がりに欠けるという印象だった。

 リア王(ケヴィン・R・マクナリ−)は無骨なリア王で、良かったと思う。ケントが女性(サスキア・リーヴズ)なのはなかなか面白く、最初はいかにも有能な補佐官らしく登場するのだが、カイアスに変装してからは男装でまるで別人みたいな様子で出てくる。戦いの場面でドラムなどを使った抽象的な表現をしているのもまあまあ良かった。