若者が右往左往〜明治大学シェイクスピアプロジェクト『トロイア戦争〜トロイラスとクレシダ』

 明治大学シェイクスピアプロジェクト『トロイア戦争〜トロイラスとクレシダ』を見てきた。

 セットは大理石の建築物を模したもので、左上に生演奏の音楽隊を配置している。衣装についてはギリシア軍は青、トロイア軍は赤で衣装を統一している。女性陣はけっこう現代風で、クレシダはピンクのドレスを着ている。

 2つの作品を組み合わせて二部構成にしていた昨年に比べると、構成も演出もかなりストレートだ。台本の言葉遣いはかなり現代風で、若い役者陣が自然に言えるような言葉遣いになっている。笑うところはたくさんあり、クレシダがディオメデスになびくところなどはコミカルな演出になっている。

 学生演劇なので当たり前なのだが、役者陣が若いせいでクレシダとトロイラスに妙なリアリティがある。クレシダは可愛いのだがあまり心が強くなく、急な引っ越しで恋人のトロイラスと引き離され、心細くなってけっこうイケているディオメデスの接近についついなびいてしまう世間知らずな若い女性という感じだ。ディオメデスが出ていってしまいそうになるたびに呼び止めるあたりの優柔不断さは面白おかしい一方、20前後の若い女性が新しくやって来た土地でなんとなく弱気になってうじうじと思い悩んでいる様子がよくわかる。トロイラスも女心があまりわからず、すぐ熱くなってしまう世間知らずな若者だ。2人とも大学や商店街で見かけるそこらへんの若者みたいな生々しさと親しみやすさがあり、とても身近な話になっている。現代政治を絡めつつ、クレシダの生き抜こうとする努力を見事に描写した鵜山版なんかに比べると全体的にずいぶん青臭く、若者たちの右往左往という感じの演出になっているが、大学のプロジェクトであることを考えるとピッタリだと思う。