全て異性配役で枠物語〜Casual Meets Shakespeare『じゃじゃ馬ならし』(ネタバレあり)

 Casual Meets Shakespeareじゃじゃ馬ならし』を見てきた。

 キャストが日替わりで、Gチームのほうを見たのだが、このチームの上演はクリストファー・スライの枠の強調し、劇中劇としての『じゃじゃ馬ならし』では女優が男性、男優が女性を演じるというものである。この芝居でこういう配役をするのはたいへん筋が通っており、ジェンダーが「役」であることを暗示する効果がある。女役はピンクとか白のかなり派手なドレスを着込んでいる一方、男役はマッチョというよりは伊達男風で、派手な装飾などがついたちょっとフェミニンな服装をしていることが多い。

 全体的に、前回の公演よりも台本のカットや修正がスマートになり、笑いを強調してうまくまとめていると思った。あまり性差別的にならないよういろいろ変更してロマンティックコメディらしくしている。クリストファー・スライの枠が最後まで強固に機能しており、最後にスライが芝居の内容に沿って領主にアイデンティティのふたしかさを思い出させ、一杯食わせるという展開もある。劇中劇ではペトルーチオ(中村裕香里)がかなり魅力的で、粋がっている一方で人の心を掴むのがうまい色男という感じだ。このプロダクションのキャタリーナ(永石匠)は美人でちやほやされるのが好きな妹ビアンカや、妹のほうにばかり目をかけている母親(原作にはいないが、このプロダクションでは母親が大きな役を果たす)とうまくいっておらず、そのせいで暴れてばかりの不良娘だ。そこにペトルーチオがやって来てキャタリーナの悩みを見抜き、あの手この手でキャタリーナを振り回して相思相愛になってしまう。キャタリーナの最後のスピーチは残してあるのだが、どちらかというとビアンカとのわだかまりの解消を主題としたものになっている。まあ、これくらいカットして直しても、ペトルーチオがキャタリーナを飲まず食わずの状態において振り回すのはヒドいし、最後のスピーチに男性優位なところがあるのは否めないのだが、『じゃじゃ馬ならし』としてはかなりよくやっているほうだと思う。笑うところもふんだんにあるし、スピード感もある。