ものすごく珍しいロバート・グリーンの翻案上演~『王様と魔術師ベイコン』

 劇団現代古典主義の『王様と魔術師ベイコン』を見てきた。ロバート・グリーン『修道士ベイコンと修道士バンゲイ』の翻案なのだが、この芝居はあまり上演されないもので、私も一度も見たことない。

 

 この作品は主筋と脇筋があってけっこう複雑なのだが、この上演は70分でスプリットスクリーンみたいな手法を使ってやるというものなので、筋はだいぶ直線的にカットされ、原作をかなり大きく変えている。原作では美少女マーガレットと恋に落ちるのはレイシーなのだが、レイシーがいなくなってベイコンが魔法を使うだけではなく恋までしており、めちゃくちゃ忙しい。

 

 全体的に、こんな上演されない芝居に挑戦するという意欲じたいがすごいし、話を簡単にしようという努力はすごくしているし、この劇団が前にやった『スペインの悲劇』に比べると照明の使い方が段違いで(照明で空の様子を表したり、気が利いている)、面白いところはたくさんある。原作では修道士のバンゲイを修道女にして、優しい雰囲気を出したあたりもなかなか良い。そうはいっても、こんだけ複雑な芝居をこんなに単純にするとまるでダイジェストみたいになってしまうとは思ったし、また修道僧であるベイコンが最後にマーガレットと結ばれるというのは、近世の感覚からするとかなりアウトだなと思った。複雑なまんま、普通にやったほうが面白いのではないだろうか…