『シェイプ・オブ・ウォーター』よりもぶっ飛んで、空前の半魚人ブーム〜『ゆれる人魚』(ネタバレあり)

 アグニェシュカ・スモチンスカ監督『ゆれる人魚』を見てきた。

 80年代のワルシャワが舞台である。人食い人魚の姉妹、ゴールデン(ミハリーナ・オルシャンスカ)とシルバー(マルタ・マズレク)が陸に上がり、ストリップティーズやロックのライヴを行うアングラなナイトクラブでスターになる。ところがシルバーがバンドの青年、ミーテクに恋をしたせいで姉妹の運命に陰が…

 『人魚姫』の翻案で話はけっこう忠実なのだが、ずいぶん残虐である。シルバーは手ひどくミーテクに裏切られて泡になってしまい、ゴールデンに殺されるという悲惨な展開になるのだが、こんな悲劇的な話を、溢れる色彩とゴスかったりパンクっぽかったりする音楽と血まみれの暴力とブラックユーモアで彩っている。可憐な乙女どころか、人魚たち、とくにゴールデンはフツーに人を襲って食ったりするし、全裸の人間(+人魚)がうろうろしてるし、異種間セックスの演出とかもある。色彩センスやヴィジュアルは大変凝っていていくぶんゴスロリっぽく、バーレスクの場面なんかはけっこう本格的だ。質感としては、『ひなぎく』をカラーにして、かつめちゃくちゃ暴力的にしたような感じと言っていいかもしれない。

 全体としてはけっこうヘンな映画で、脚本にも突っ込みどころはある。若々しく乙女チックだとはいえどう見ても18歳は越えてるように見えるし、全裸でうろうろしてストリップクラブで働いてるゴールデンとシルバーをクリシア(キンガ・プレイス)が子ども扱いする場面とかはあまり説得力がないと思った(ベクデル・テストはキンガと姉妹のやりとりでパスするのではと思う)。また、最後のほうではもうシルバーが死ぬまえにゴールデンがミーテクを食っちゃえよ!と思って個人的には少々イライラしてしまったところもある。とはいえ、センスの点ではとても見るべきところのある映画だと思うし、バーレスククラスタにはとてもオススメだ。

 しかし、『シェイプ・オブ・ウォーター』といい、これといい、最近は空前の半魚人ブームなんだろうか…私、10日間で人間が魚のような人とセックスする映画を2本も見たぞ…『ゆれる人魚』のほうがだいぶエグいが。しかも『RAW 少女のめざめ』も最近見たから、食人乙女の映画も続けて2本見たことになるし…