最も応援上映してはいけない映画~『主戦場』

 『主戦場』を見てきた。日系アメリカ人であるミキ・デザキが監督をつとめたドキュメンタリー映画で、従軍慰安婦をめぐる論争を扱ったものである。

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 全体的に非常にわかりやすく、テンポのいい編集でエンタテイメントらしく作られたドキュメンタリーである。マイケル・ムーアみたいに監督が出てきて面白おかしく自分の意見を主張したりするというわけではないのだが、編集などがいちいち気が利いており、見ていて飽きない。デザキ監督がこういう映画を撮ろうと思ったのは、日本でネット右翼に攻撃されたことがきっかけだそうだ。

 

 基本的にはいろいろな人にインタビューしているだけなのだが、否認主義者たちが本人たちは冷静に話しているつもり…なんだと思うものの、学問的議論どころか倫理的に問題がある発言を(自分たちはまともな主張だと思って)連発しており、笑うしかないようなところがたくさんあった。サンフランシスコの慰安婦像設置に関する審議でも否認主義者がこのままのノリで元慰安婦の女性の名誉を毀損したので議員が激怒していたが、まあ当たり前だと思う。

 

 この映画については応援上映をしてはどうかという意見がちらほら見られるのだが、応援上映を絶対してはいけないタイプの映画だと思う。応援上映では登場人物をディスるのは禁止だそうだが、どう考えても否認主義者の醜悪さをバカにする以外やることがなくて、『1984年』の2分間憎悪みたいになってしまうのがオチだ。否認主義に反対している人たちは別に応援されるようなキャラではないし、単に学問的にわかっていることを言っているだけなので、声かけ応援がふさわしいとも思えない。『ブラック・クランズマン』では『國民の創生』を見ているKKKが憎悪丸出し応援上映をしていたが、たとえ対象が否認主義者であっても憎悪を叫びながら映画を見るのは良くない。