とても面白かったが、もうちょっと日本語字幕があったほうがいい~『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

 フレデリック・ワイズマンの新作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を見てきた。ニューヨーク公共図書館を撮った3時間半くらいある大作ドキュメンタリーである。

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 私はワイズマンの所謂「壁のハエ」風な撮り方(壁にとまってるハエみたいに一切介入しないで撮るやり方で、あまり説明がないので尺が長くなったり、わかりづらくなったりもする)は別にそんなに好きでもないのだが、これは大変面白かった。委員会の会議とか社会教育活動、アーカイヴの運営などをじっくり撮ることで、図書館がいかにニューヨーク市という共同体に貢献し、社会を支える上で不可欠なインフラであるかが描かれている。ニューヨーク公共図書館は単なる本の置き場ではなく、PC教室、公演、市民生活についてのミーティングなどさまざまなことを行っており、市民にあらゆる知識への道を開き、就職とか健康維持なども含めた総合的な支援を行う場所だ。舞台芸術図書館ではブロードウェイをかかえるニューヨークらしく舞台芸術の手話通訳についてのレクチャーなどを行い、アフリカ系アメリカ人研究センターであるションバーグ図書館ではアフリカ系アメリカ人の歴史についての展示や公演を行う。図書館の多角的な活動をあますところなくとらえた作品だ。

 

 そういうわけで大変良い映画なのだが、ただ日本語版ではもっと字幕をつけたほうがいいと思う。「壁のハエ」方式のせいで、収録されている公演のフッテージなどで、誰が誰と話しているかなどが字幕で出ない。パティ・スミスとかタナハシ・コーツみたいな有名作家がさらっと出てきて、たぶんこういう人たちのトークを聞いて本を読んでみたいなとか思った人もいるのではと思うのだが、誰が話しているのかについての名前の字幕などが一切出ない。「パティ・スミス 詩人」程度の解説字幕は出してもいいのではと思った。