内容は面白いのだが、ダンスの撮り方が…?『ダンシングホームレス』

 『ダンシングホームレス』を見てきた。

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 ホームレスの男性からなるダンスカンパニー、新人Hソケリッサ!の様子をとらえたドキュメンタリー映画である。新人Hソケリッサ!はカンパニーの振付師でプロだったアオキ裕キ以外は全員、現在ホームレス生活をしているか野宿生活の経験がある男性で、ダンス経験者も少しはいるが全くの未経験者もいる。メンバーのインタビューや、釜ヶ崎へのツアーの様子を通してカンパニーの活動を描くものである。

 

 主要メンバーがホームレスになった経緯などをわりと詳しく(時々「それはちょっと遠慮なく質問しすぎなのでは…」と心配になるくらいしつこく)インタビューを通して明らかにしており、それぞれの人生にいろいろな苦労があり、ホームレス生活に関する捉え方なども人によって違うことがわかる(共通点はホームレス生活だとまず歯にくるということだ)。また、カンパニーの運営も大変で、まあダンスや芝居のカンパニーなんていうのはどこもそうだがこのカンパニーもまったくお金がなくてアオキがバイトして運営費の赤字を埋めたりしているらしいし、また就職してホームレス生活から抜けると仕事の都合でカンパニーを辞めることになるメンバーがいたりとか、決して安定的に全員で活動できるわけではない。そのあたりを丁寧に描いている。

 そういうわけで非常に興味深い作品なのだが、ただちょっと思ったのは、この映画、あまりダンスの撮り方はうまくないのじゃないかということだ。ダンスじたいはかなり自由にメンバー全員で考えるモダンで特異なもので面白いのだが、最後に満を持して上演される大作「日々荒野」とか、悪い意味でミュージックビデオっぽいというか、振り付けの流れがイマイチわからず、ライヴっぽい臨場感のない撮り方をしているのである。もっとカメラを引いて全体の動きのつながりを見せるような感じにすればいいのではと思った。