音楽はいいが…メトロポリタンオペラ『ウェルテル』(配信)

 メトロポリタンオペラの配信でマスネのオペラ『ウェルテル』を見た。リチャード・エア演出、アラン・アルタノグル指揮で、2014年に上演されたものである。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』が原作で、アルベール(デイヴィッド・ビズィッチ)と既に婚約しているシャルロット(ソフィー・コッシュ)に恋したウェルテル(ヨナス・カウフマン)が失恋して自殺するまでを描いた作品である。

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 奥行きをうまく使い、プロジェクションも使った舞台装置は魅力があり、とくにダンスのところで背景のプロジェクションによって動きをつけているのは面白かった。音楽はとても良く、最初に出てきたクリスマスの歌が最後にまた出てきて話が閉じるあたりの構成もうまい。ウェルテル役のヨナス・カウフマンは深みのある歌声で、大変ロマンティックで表情豊かだし、他の歌手たちもとてもしっかり演じている。

 ただ、個人的な好みとしてあまり台本が好きになれない…というか、終盤、シャルロットがウェルテルの意図に感づいているのに、銃を渡してその後すぐウェルテルの家に行ったらウェルテルが自殺している…というあたりは展開がバタバタしすぎなのではないかという気がした。原作から変更があるのでそのせでちょっと整理されていない印象を受けるのかもしれないが(原作は高校生くらいの時に読んだきりなので細部は覚えていないのだが)、そうは言ってもシャルロットは自分のせいで人が死ぬかもしれない事態だというのに、あんまり賢明かつ迅速に行動しているようには見えない。全体的にシャルロッテは美人で家庭的なわりと型にはまった感じの女性で、あんまり魅力のあるヒロインではないように思った。