モーツァルトの音楽を使った抱腹絶倒のCovidコメディオペラ~フィンランド国立オペラ、Covid Fan Tutte(配信)

 フィンランド国立オペラによるCovid Fan Tutteを配信で見た。2020年8月に初演された『コジ・ファン・トゥッテ』の翻案で、音楽は少しだけワーグナーなどが使われている以外はほぼモーツァルトである。指揮者のエサ=ペッカ・サロネンと、有名なワーグナーソプラノであるカリタ・マッティラが、新型コロナウイルス流行による上演中止の状況をもとにした作品を作りたいと考え、それに沿ってミンナ・リンドグレンが台本を作った新作である。

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 フィンランドの国立オペラがワーグナーの『ワルキューレ』を上演しようとしていたが、顧客担当のマネージャー(サナ・カイサ・パロ)が出てきて新型コロナウイルス流行のせいで中止になるところから始まる。このマネージャーの言うとおりモーツァルトが上演されることになり、歌手たちは新型コロナウイルス流行に沿ったいろいろな状況の変化について歌ったり演じたりする。世界的なワーグナーソプラノ(マッティラがだいたい自分自身として演じている)はEUのいろんなオペラハウスの大規模なプロダクションに出るはずだったのに、新型コロナによる上演中止で故郷のボロアパートにこもることになっておかんむりだったのだが、フィンランド国立オペラからのオファーを受けることになる。その後は政府によるプレスカンファレンスやら、要請を無視して遊びたがるご老人の無双、買い占めやら転売、新しい生活様式の導入などなど、いろいろ新型コロナネタの諷刺が続く。

 だいたいのネタは新型コロナが流行している地域ならどこの人でもわかりそうなものでとても笑えるのだが、たぶんフィンランド人だともっと細かく元ネタがわかって笑えるのかもしれないと思う。赤い衣装でダンスする擬人化された新型コロナウイルスなんていうものまで登場し、けっこう悪ふざけの効いた作品だが、感染症が流行っている中を笑って過ごしたいという状況にはピッタリの作品だ。そしてモーツァルトの音楽というのはもともとユーモアにあふれているので、こういう時でもあうんだな…と思った。