体力の要るひとり芝居~『プライマ・フェイシィ』

 NTライヴで『プライマ・フェイシィ』を見てきた。スージー・ミラー作、ジャスティン・マーティン演出で、ジョディ・カマー主演のひとり芝居である。ハロルド・ピンター劇場で上演されたものを映像化している。

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 リヴァプールのワーキングクラスの家庭出身で、刻苦勉励して法廷弁護士になったテッサ(ジョディ・カマー)は犯罪の弁護が専門だった。性犯罪者の弁護もたくさん手掛けていたが、ある日、思いもよらないところで性暴力にあってしまう。自分が遭遇したケースが有罪になりづらいことを弁護士として理解しつつ、警察に訴えることにしたテッサだったが…

 ひとり芝居にしてはやや長く、やるほうも見るほうもかなり体力の要る芝居である。『最後の決闘裁判』でも勇気ある性暴力被害者を演じていたジョディ・カマーの熱演で、最初はいろいろ笑うところもあるのだが、だんだん全く笑えないつらい芝居になってくる。テッサはこれまで法律を信じて仕事に邁進していたのだが、自分が法律の網の目からこぼれ落ちる存在になった時にこれまでやってきたことへの信頼と自信がガラガラと崩れ去って行く様子が非常にリアルに描かれている。見ていて非常に厳しいのが、たしかに現行法ではこのケースは有罪になりにくく(それはテッサも充分理解している)、法体系の見直しが必要だと思われるのだが、いったい法律のどこをどういじったら良くなるのかということすらあまり見当がつかないということだ(それくらい法律は男性中心的にできているし、また疑わしきは罰せずが基本だというのもあり、変に文言をいじると全く別のところで問題が発生したりする)。