備忘録として今年配信やソフトで見た新作映画をリストして(27本ある)、ひとことだけ感想を書いておこうと思う。
・『ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス』(2022年1月に限定劇場公開、その後Netflixに)
ハンガリーの時代ものホラーで、第一次世界大戦の傷跡やスペインかぜの大流行に写真をからませている。よくできたホラーだが、主人公トーマスのサイドキックになるのが純粋なかわいい女の子というところはちょっとステレオタイプに感じた(とんでもない悪ガキの男の子とかのほうが意外性があって面白くないかな?)。
・『アダム&アダム』(2022年3月配信、Netflix)
ライアン・レイノルズ主演のSFコメディ。『フリー・ガイ』と同じくショーン・レヴィが監督で、楽しめるが『フリー・ガイ』ほどの出来ではない。
・『私ときどきレッサーパンダ』(2022年3月配信、Disney+)
トロントに住む中国系移民の少女が主人公のアニメ映画で、『RAW~少女のめざめ~』とかと同系統のテーマを扱っているが、はるかに明るくてユーモアあふれる作品。
・『フレッシュ』(2022年3月配信、Disney+)
セバスチャン・スタンの怪演と、デイジー・エドガー=ジョーンズをはじめとする女性たちの助け合いが見所のホラー。かなりショッキングだが緊張感があって大変面白い。同じくDisney+でやっていた『シー・ハルク』と並んで、今年は「見るからに完璧な好青年が近づいてきたら裏がある」という話が多かったような…
・『ジャジャ馬ならし』(2022年4月配信、Netflix)
ポーランドのロマコメ。ほんのちょっとだけシェイクスピアに基づいていると思われるが、全然面白くなかった。
・The Quiet Girl (2022年5月にアイルランドで公開、輸入ブルーレイ)
台詞のほとんどがアイルランド語の低予算作で、たぶん日本公開未定。80年代に親戚の家に預けられた小さな少女の話で、小規模な作品だがとても丁寧に作られている。
・『シニアイヤー』(2022年5月配信、Netflix)
レベル・ウィルソンが20年間の昏睡から目覚め、なれなかったプロムクイーンを目指す高校映画。ウィルソンの魅力もあってつまらない映画ではないが、いろいろ設定が強引なところがあるのと、『セブンティーン・アゲイン』+『25年目のキス』みたいな感じであんまり新しさはない。
・『ファイアー・アイランド』(2022年6月配信、Disney+)
ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』の現代アメリカ版翻案で、ゲイのロマコメになっている。こんなに上手に『高慢と偏見』を現代化できるのかと感心した。非白人のゲイ男性がメインキャラで、みんなキャラが立っているのもいい。
・『説得』(2022年7月配信、Netflix)
ジェーン・オースティンの『説得』の映画化で、現代的な翻案なのだが現代化のやり方がおかしい。『説得』のヒロインのアンはどっちかというと引っ込み思案で優しい女性で、そういうヒロインを軸に、大人しく他人の言うことを聞いてばかりだと人生がえらいことになりますよっていうことを描いているところが面白いのだと思うのだが、この映画のアン(ダコタ・ジョンソン)は全然引っ込み思案な感じがない元気な女性で全くイメージにあわないし、むしろヒロインをそういう性格にするとなんかイラっとくる話になるなと思った。
ルッソ兄弟が監督、ライアン・ゴズリング、クリス・エヴァンズ、アナ・デ・アルマス主演の豪華アクションで、ゴズリングが終盤で怒濤の子連れ狼モードに突入する。
・『プレデター:ザ・プレイ』(2022年8月配信、Disney+)
「プレデター」シリーズの作品を初めて見た。ヒロインのナル(アンバー・ミッドサンダー)はめちゃくちゃカッコよかったし犬もかわいいのだが、イマイチプレデターがどういう生き物なのかわからず、第1作を先に見るべきだったと後悔した。
・『リベンジ・スワップ』(2022年9月配信、Netflix)
90年代~2000年代初頭のティーン映画にオマージュをささげまくった高校映画である一方、けっこう複雑なことをやっていて、とがったブラックユーモアたっぷりの作品。ヒロインが2人ともいけすかねえ女なのだが、その2人がいろいろ協力と敵対を繰り返しつつ憎悪を乗り越えていくところが面白い。
・『スクール・オブ・グッド・アンド・イービル』(2022年10月配信、Netflix)
ポール・フェイグ監督作。おとぎ話の現代風パロディ映画で、キャスト陣はいいのだが、わりと話がとっちらかっていてもたついているところが長く感じられ、ハリー・ポッターのバッタもんみたいに見えるところも…
・『グッド・ナース』(2022年10月配信、Netflix)
実際の事件を扱った医療サスペンスなのだが、一番怖かったのはアメリカは看護師ですらすぐにまともな保険に入れないということである。殺人犯ではなく、告発者に焦点をあてているのが良いと思う。
・『ロザライン』(2022年10月配信、Disney+)
『ロミオとジュリエット』で、名前だけ出てきてロミオに一瞬でフラれるロザラインを主人公にした翻案。ロザラインを演じるケイトリン・デヴァーがめちゃくちゃ可愛く、他にも個性的で将来有望そうな若手俳優が大挙出演する楽しい作品。
・『スクリーム』(2022年11月配信、Netflix)
『スクリーム』シリーズ最新作で、ファンダムの暴力的な悪質化などを扱ったメタなホラー。けっこうよくできていて面白い。見た後エピ9(悪質なファンダムの影響もあって大迷走)を思い出して暗くなった。
・『バーバリアン』(2022年11月配信、Disney+)
ヒロインのテス(ジョージナ・キャンベル)がAirbnbで借りた旅行先の家がダブルブッキングだった上、さらにヤバい秘密があったというホラーで、『MEN 同じ顔の男たち』や『フレッシュ』と並んで最近はこういうホラーが流行りなんだろうと思う。
・『ウエスト・エンド殺人事件』(2022年11月配信、Netflix)
ライアン・ジョンソン+ウェス・アンダーソンみたいな時代ものミステリ。サム・ロックウェルやサーシャ・ローナンが好演していて気楽に楽しめる作品だが、どこかで見たような要素が多い。
・『エノーラ・ホームズの事件簿2』(2022年11月配信、Netflix)
前作同様、若い女性が活躍する楽しいミステリ。1888年のマッチ工場女子労働者ストライキの史実を上手に組み込んでいる。
・『聖なる証』(2022年11月配信、Netflix)
アイルランドを舞台にヴィクトリア朝の断食少女を扱った作品で、地味な映画だがめちゃくちゃスリリングで面白かった。
・『魔法にかけられて2』(2022年11月配信、Disney+)
やりたいことはなんとなくわかるのだが、大変面白かった前作に比べると脚本がとっちらかりすぎており、相当にイマイチだった。あのよくできた第1作に続けてこれを作る意味があったんだろうか…
・『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(2022年11月限定公開、その後Netflix)
イタリアのファシズムをからめたちょっと暗い感じの『ピノッキオ』の翻案で、綺麗なストップモーションアニメも声の演技も非常にしっかりしている。いかにもデル・トロらしい作品だが、ただ個人的な好みとして、たぶん私は人間に作られた被造物が人間を愛するようになる話があまり好みじゃないのだろうと思う。
・『フォーリング・フォー・クリスマス』(2022年11月配信、Netflix)
リンジー・ローハン主演のお気楽なホリデイロマコメ。どうってことない話だが、最後にヒロインの婚約者がさらっとバイセクシュアルでしたと開示されるのは進歩と言えば進歩…ではあるものの、あまりにもこのキャラが最初からステレオタイプにクィアなのは良くない。
・『スピリテッド』(2022年11月配信、Apple TV+)
ライアン・レイノルズとウィル・フェレル主演の『クリスマス・キャロル』翻案。レイノルズとフェレルの息が合っていて、クリスマスコメディとしては比較的面白いほうだと思う。
・『"Sr.": ロバート・ダウニー・シニアの生涯』(2022年12月配信、Netflix)
ロバート・ダウニー・ジュニアが、ニューヨークのインディペンデント映画界で有名なクリエイターである父のロバート・ダウニー・シニアについて撮ったドキュメンタリー映画。お父さんのシニアはけっこう伝説的な人だそうで、作った映画もけっこう尖っていて面白そうで、こんな業績があった人だったのか…と思った。
・『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』(2022年12月配信、Netflix)
前作同様、とても洗練されたポストモダンミステリである(むしろ展開じたいは前作よりひねってあるかも)。既存のミステリにオマージュを捧げつつひっくり返すところがあり、設定じたいも大変現代的で諷刺がたっぷり入っているのだが、ブノワ(ダニエル・クレイグ)が弱い立場にあるが実は底力のある女性を常に信用して助けて、力を引き出してくれるところはエルキュール・ポアロの精神をしっかり継承している。
・『マチルダ・ザ・ミュージカル』(2022年12月配信、Netflix)
ロアルド・ダールの有名な児童文学のミュージカル舞台を映画化したもの。子ども向けの楽しいミュージカルで、トランチブル校長を楽しそうに怪演するエマ・トンプソンをはじめとしてキャストも頑張っており、お気楽な中にブラックユーモアもある。