ちょっと詰め込み過ぎ感~『ホワイト・ノイズ』(配信)

 Netflixの『ホワイト・ノイズ』を配信で見た。ノア・バームバック監督の新作で、ドン・デリーロ小説の映画化である。

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 非常に説明しにくい話なのだが(そもそも小説が映画化不可能とか言われていた)、だいたい三部構成である。アメリカの大学町でドイツ語ができないのにヒトラー研究を教えているジャック・グラドニー(アダム・ドライヴァー)を中心に展開する。前半はジャックの暮らしを描いた大学もの、中盤は有毒物質の流出による公害ディザスター映画、終盤はジャックの妻バベット(グレタ・ガーウィグ)の薬物使用に関する話である。

 序盤はデイヴィッド・ロッジの小説とか『Re:LIFE~リライフ~』みたいなアメリカの大学を風刺的に描いた作品である。ただ、私は小説を読んだ時からどれくらい笑っていい話なのかあんまりよくわからなかったので、このへんはアメリカの大学に詳しい人にむしろどこが笑うところなのか聞きたい。ただ、ジャックが授業をやるところはすごく可笑しい…というか、なんか同じようなチームで作った『マリッジ・ストーリー』でもアダム・ドライヴァーがライヴパフォーマンスをやるとなんか変な感じがするというのを前面に出していたので、あそこでやってた前衛演劇の延長みたいな描写なのかなと思う。

 中盤は『ミスト』みたいな感じだが、もっとブラックコメディ的である。ただ、原作に比べるとたぶん新型コロナウイルス感染症の影響を受けており、マスクに関する描写がわりと強調されていたりする。いつのまにかみんな汚染の話を忘れてマスクもしなくなるが、人によっては後で体を蝕む後遺症が…みたいなのはアメリカの公衆衛生の現状と一緒に考えるとリアルな話なんだろうなと思う。

 終盤は新種のドラッグをめぐる話である。正直、とくにここについてバベット役にグレタ・ガーウィグをキャスティングするのが適役なのか、私はあんまり判断できなかった。もう少し年が上で、ああいうヘアスタイルがナチュラルに似合う女優をキャスティングしたほうがいいんじゃないかと思った。

 全体的にはあの小説をよく映画化したな…と思う一方、詰め込み過ぎでそれぞれのパーツがバラバラになっているような気はする。一貫したブラックユーモアはあるのだが、トーンはあんまり一定していないと思う。あと、たぶんイギリス映画ならもっとジャックを突き放した感じで描いているだろうなと思った(スティーヴ・クーガンがもうちょっと若かったら似合いそうな役だ)。