今と舞台の撮り方が違ってちょっとビックリ~『書かれた顔 4Kレストア版』(試写)

 ダニエル・シュミットの『書かれた顔 4Kレストア版』を試写で見た。1995年の映画の4Kレストア版である。坂東玉三郎についてのドキュメンタリー…というか、ドキュメンタリーっぽいところにちょっとしたフィクションもある、一風変わった作品である。

 英語をまじえながら女形の芸について玉三郎が話すところはとにかく玉三郎が愛らしい上、いろいろジェンダー舞台芸術について考えさせられるような話の内容も入っている。他にも杉村春子とか大野一雄も出てきており、あんまりストレートな形ではないにせよ、「描かれた女性像」みたいなものについていろいろ考察できる作品だ。ただ、劇中劇みたいな『黄昏芸者情話』のところは正直、あんまり要らないかもしれないと思った…というか、もっとインタビューとか実際の玉三郎の舞台を見たいなと思った。

 あまり本筋とは関係ないところでちょっとビックリしたのは、今と全然、舞台の撮り方が違うところだ。ナショナル・シアター・ライブやMETライブビューイングがあり、新型コロナ流行以来全面的に舞台配信が発展した今の視点で見ると、引きのショットが大変少ないこの映画の舞台の撮り方はけっこう古いというか奇異に見えるところがある。玉三郎の踊りを撮るところでは上半身のクロースアップが多くて足さばきが見えないところもたまにあり、今なら全身を撮ったり、舞台の全体を撮るショットがもっと入るのではという気がした。