あまり話したくないであろう件にもちゃんと触れたドキュメンタリー~『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』(試写)

 タラ・ウッド監督『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を試写で見た。

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 主に頻繁に一緒に働いている役者やスタッフ陣のインタビューからタランティーノの映画作りを追ったドキュメンタリーである。あえてタランティーノ自身にはインタビューしておらず、ティム・ロスサミュエル・L・ジャクソンマイケル・マドセンゾーイ・ベルなどのタランティーノ組の役者陣が大挙登場し、タランティーノの撮影スタイルや、撮影現場で起こった面白可笑しいことやらアクシデントやらについて話してくれる。それを通してタランティーノの撮り方やこだわりがわかってくる構成になっている。

 おそらくタランティーノ自身はあまり触れられたくないであろう件にもちゃんと触れているのが良いと思った。『キル・ビル』の撮影でユマ・サーマンをケガさせたことにもちゃんと触れており、タランティーノ自身はそのことに極めて後悔しているということも出てきている。一方で『デス・プルーフ』ではスタントウーマンのゾーイ・ベルが職業柄顔を隠しがちなのが気に入らなくて車のアクションを取り直したとか、『イングロリアス・バスターズ』でブリジットが殺される場面では監督が暴力シーンについてはクリストフ・ヴァルツがあまり信用できないと思って自分でブリジット役のダイアン・クルーガーの首を絞めるフリをしたとか、そういう話を女優自身が(わりと面白おかしく)語っており、タランティーノはなんかどうも女優陣がちょっと危険な場面をやることに何か不健全とも言えるようなこだわりがあるんだろうな…というのもなんとなく察することができるようになっている。

 ハーヴィ・ワインスティーンの件についてもけっこうきちんと触れている。マイケル・マドセンなどが、最初からワインスティーンは大変一緒に仕事がしづらい人だった…とかいうような話をしていて、気味の悪いエピソードを披露してくれる。これについては事件の詳細が発覚した時点でタランティーノはワインスティーンときっぱり関係を断ったということが説明されており、まあちょっと言い訳的ではある。