教育的な火災映画~『フラッシュオーバー 炎の消防隊』(試写)

 オキサイド・パン監督『フラッシュオーバー 炎の消防隊』を試写で見た。

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 灌城(中国の架空の都市)の工業団地で地震による爆発事故が発生する。被害が甚大であるため、近隣の消防隊が全員出動する。消防士たちは余震や有害物質の漏出と必死に戦うが…

 火事の描写は大変迫力があるのだが、人間ドラマはあまりたいしたことない…というか無いに等しい。消防士たちのキャラクターはあまり掘り下げられておらず、署長の婚約問題とか、若い通信員である韓凱(杜江飾)と専門家の葉歆(佟麗婭)のかかわりとかは要らないのでは…と思うような蛇足な感じである。とくに専門家の葉はひとりだけとってつけたように出てくる女性で(緊急対応中で多忙なはずの火災の研究者にしてはパリっとしすぎていてあまりリアリティは無い)、この女性を韓が騎士道精神と憧れで助けようとする…みたいな昔ながらの美姫救出的展開で、たぶん無いほうがいい。

 それよりもこの映画の見せ所は最新の消火テクニックとか消防士が使う道具で、アクション映画というにはずいぶんと教育的な内容である。ピンチになると科学戦隊みたいな感じで最新の装置が出てくる。見ていて「へえ、最近はこんなハイテク器具で消火するのか」とか「ドローンは火災現場で重要な役割を果たすんだな」とか、そっちのほうが面白く、防災に関する意識が高まりそうな映画ではある。また、最新の技術を使っているせいで通信員の仕事が重要で、常に火災の状況を映像で記録して対策本部に送り(それをもとに本部で専門家が状況を分析する)、よく見えないところや人間が入ると危険かもしれないところはドローンを飛ばして偵察するなど、大活躍だ。なんでも中国では消防士の雇用契約や訓練に問題があり、2015年の天津の危険物火災ではそのせいで被害が広がって消防士の殉職も多発したそうなので、ひょっとするとこの映画はそういう悪いイメージを打ち消すべく、最近はちゃんと消防士の訓練もやっているからみんな防災に気をつけよう…みたいな軽いプロパガンダと防災教育を兼ねた映画なのでは…という気がしてしまった。