よくできたチェーホフ~自由劇場『三人姉妹』

 自由劇場でunrato#10の『三人姉妹』を見た。

 わりとオーソドックスな演出で、ロシアの上流階級といった感じのセットや美術、衣装で揃えている。正攻法でじっくりチェーホフを見せる感じで奇をてらったところもあまりなく、キャストもみんな実力派だ。私は以前からイリーナはアセクシュアルなのかも…とも思っていたのだが、このプロダクションではソリョーニ(内田健司)もトゥーゼンバッハ(近藤頌利)もわりと若くて颯爽とした感じで、前者は憂鬱そう、後者はいい人風で個性も違うのに全くイリーナ(平体まひろ)が惹かれている気配が無いので、余計アセクシュアルなのかな…という気がした。

 ひとつ気になったのは、どうも私は『三人姉妹』を以前ほど楽しめなくなっているのではないか…ということだ。もちろんこれは以前から全然楽しい芝居ではなかったのだが、新型コロナウイルス感染症が流行する前のほうがまだ興味深いと思って観劇できた気がする。私は新型コロナウイルス感染症の流行の間にめちゃくちゃアンチワークな考え方をするようになったので、『三人姉妹』の「働かなくちゃ」というセリフに面白みを感じなくなってきているように思うのである。これは私が変わったからであって芝居の質が変わったのではなく、いたしかたないことだろうと思う。