インドでジャーナリズムの精神を生きる女性記者たち~『燃えあがる女性記者たち』

 『燃えあがる女性記者たち』を見てきた。インドのウッタル・プラデーシュ州で、ダリトの女性たちが運営している新聞である『カバル・ラハリヤ』を追ったドキュメンタリーである。

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 ティーンの時に結婚して母になったが、教育を受けて今は主任記者になっているミーラ、鉱山町で育った気鋭の若手スニータ、新人のシャームカリの3人を中心に報道活動を取材した作品である。ウッタル・プラデーシュでは女性やダリトに対する差別が激しく、女性に対する暴力や、貧しい地域での不正については報道もされないし、警察も腐敗していて真面目に取り合わない。冒頭に出てくる貧しい女性に対する性暴力が全く捜査されていないという状況は絶望的である。『カバル・ラハリヤ』はそうした無視されている問題を取材し、報道することで警察や行政の介入を引き出している。最近力を増しているヒンドゥー至上主義的な動きについても、取材対象から不要な敵意を買わないよう気をつけつつ批判的にきちんと取材して報道する。これこそあるべきジャーナリズムの姿だと思った。いろいろ圧力も受けるのだが、記者たちは負けずに頑張る。

 

 一方で『カバル・ラハリヤ』で働いているのはかなり貧しい家庭出身の女性たちで子育てなどもあり、働く母親に厳しいインドでは世間の風当たりも強い。教育のあるミーラはかなり恵まれているほうで、シャームカリは最初は読み書きだけで手一杯、アルファベットも読めないくらいである。そんなシャームカリが頑張って記者として成長する一方、最初から優秀だったスニータは結婚退職を迫られることになる…など、記者たち個人についてもいろいろドラマがある(スニータは結局結婚後も復帰することにしたらしいが)。そのへんもあまり感傷的にならずきちんと撮っており、とても見応えのある作品だ。