階段にも墓が口をあける~明治大学シェイクスピアプロジェクト『ハムレット』

 明治大学シェイクスピアプロジェクト『ハムレット』を見てきた。

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 柱と柱の間がアーチのようになっている宮廷っぽいセットで、真ん中に大きな階段があり、2階建てでさらにその奥にもうひとつ、小高くなっている足場のようなところがある。両端からも2階にアクセスすることができ、左奥には生演奏の楽団がいる。この2階建ての空間の使い方がけっこう面白く、墓場の場面では奈落のかわりに階段の真ん中に穴を開けてここをお墓にしている。上に登る途中で墓が口を開けるという、どこに死の原因が転がっているのかよくわからないこのお芝居の内容を象徴するような見た目になっている。一番最後の場面では奥の高いところにこれまで死んだ人たちが集まって惨劇を見届けており、全体的に死は突然やってくるもので、日常と死の間は紙一重…という雰囲気のプロダクションである。

 あまり奇をてらったことはしておらず、悩みすぎてほぼ正気を失っているハムレットと周りの人たちのかかわりをじっくり見せる正攻法の演出だ。最初に第3独白が一度出てくるところは少し変わっているが、けっこう見かける編集ではある。テクストはかなりカットして2時間半にまとめられており、フォーティンブラスのポーランド侵攻の場面は全カットだし、ハムレットの船が海賊に襲撃されたあたりの説明などもだいぶ刈り込んで端折っている。ひとつだけ気になったのは生演奏がかなり頻繁に背景音楽を提供しており、台詞と音楽がかぶっているのがけっこう多いことで、アマチュア上演だとちょっと台詞が聞こえにくくなることもあるので音楽は控えめにしたほうがいいのでは…とは思った。