ドイツラインオペラによるベッリーニ『夢遊病の女』の上演を見た。ヨハネス・エラト演出、アントニオ・フォリアーニ指揮によるものである。2023年4月21日に上演された舞台の録画である。
舞台はスイスアルプスの田舎の村である。ヒロインのアミーナ(ステイシー・アローム)はエルヴィーノ(エドガルド・ロチャ)と婚約するため幸せいっぱいだった。ところがアミーナは夢遊病を抱えており、夜中に無意識にうろついてしまうせいでお忍びで村にやってきていたロドルフォ伯爵(ボグダン・タロシュ)との浮気を疑われてしまう。嫉妬深いエルヴィーノはアミーナとの結婚を破棄しようとするが、やがてアミーナが病気だということがわかって一件落着となる。
全体的に夢とか眠りとかを意識しているのか、光量が少なくて物理的に暗めな感じの舞台である。アミーナの婚礼衣装だけが白く目立つ感じだ。やりたいことはわかるのだが、序盤の婚約の場面はもう少しのどかに明るくして、夢遊病の場面とメリハリをつけてもいいのでは…とも思った。
どうってことないロマコメものみたいなあらすじに魅力的な音楽がくっついている感じの作品だが、ヒロインが夢遊病のせいで浮気を疑われるということで、病気に起因するけっこう深刻な問題を描いているオペラではある。夢遊病がけっこう理想化されていてあんまり現実の疾患には似ていないと思うのだが、婚約者の健康のことについて全然気付いておらず、序盤から嫉妬心が強そうなエルヴィーノはアミーナに釣り合うのかな…と疑問に思ってしまった。なお、そういう話ではないのだろうが、婚前交渉があればこういう恋人の健康問題については双方の理解が進んで結婚生活への適切な準備ができるはずだと思うので、やっぱり婚前交渉が全然ないのは良くないのでは…と思ってしまうお話でもあった。