あまり台本が個人的に…『巨匠 ―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』

 紀伊國屋サザンシアターで『巨匠 ―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』を見てきた。丹野郁弓演出、劇団民藝による公演である。木下順二ポーランドの劇作家の作品のドラマ化をテレビで見て、その20数年後に記憶に基づいて書いた作品…だそうだが、翻案としての著作権料はどうなっているのかとか、そのへんがなかなかよくわからない作品である。

 全体には力の入った上演でプロダクションとして面白くないとかいうようなわけではないのだが、個人的には台本が全然、好みではないと思った。ナチスが小さな家を訪問し、ポーランドレジスタンスの工作に対する報復として知識人を4名選んで殺すと言ってくる。そこで数人が選ばれるのだが、ここ数年は簿記係として働いていた老男優が簿記係で知識人ではないということで選ばれない…ことになるものの、老男優はわざわざ自分は役者だと言って『マクベス』の短剣のスピーチを披露し、知識人として選ばれて殺されてしまう。最初と最後にプロローグとエピローグがあり、これを見ていて今はスターになった若手俳優がこの話を回想するという枠に入っている。私はどうもこの話が好きになれなかった…というか、わざわざ自分から名乗り出て殺されに行く人を感動的に描いているのがどうも受け入れられなかった。これこそ俳優魂だ、みたいなところはちょっと演劇の自意識が鼻につきすぎる感じで、マッチョでもあると思うし、全然趣味ではないと思った。