ゲームストップ株騒動を描いた抱腹絶倒のコメディ~『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(試写)

 クレイグ・ギレスピー監督『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を試写で見た。実際の事件である2021年のゲームストップ株騒動を描いたものである。

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 「ローリング・キティ」というハンドルで株の配信チャンネルをやっているキース(ポール・ダノ)は弟のケヴィン(ピート・デイヴィッドソン)にオタクっぽい無駄なことをやっているとバカにされていた。キースはゲーム店であるゲームストップ社の株を買っており、ヘッジファンドが仕掛けた空売りに対して応戦を呼びかける。これに全米各地の個人投資家が応じ、ゲームストップの株が急騰してヘッジファンドが多額の損失を被ることになる。

 『アイ、トーニャ』のクレイグ・ギレスピー監督作だけあって、テンポのいい諷刺的な演出が面白い。小さい役までけっこう有名な俳優がキャスティングされており、どの役もキャラが立っているのだが、初登場時にひとりひとり資産額が画面に出て、いかに資産のない人たちがものすごい金持ちに対抗したかがわかるようになっている。ポール・ダノがわりと肩の力を抜いたユーモラスな様子でキース役を演じており、いろいろ欠点はあるものの庶民的で家庭的なお父さんという感じで、弟役のピート・デイヴィッドソンとの掛け合いなども含めてオフビートで可笑しい。ヘッジファンドが大損するのは見ていてけっこう気分が良い…というか、庶民的な連中がなんとなくネットでつながり、これまたなんとなくくすぶっていた反抗心や野心に火がついて、結局は大企業に一泡吹かせることになる様子を、理想化するでもなくバカにするでもなく悲喜こもごもといった様子で描いているのが良いと思った。登場人物の命運はさまざまだが、お金に取り憑かれた現代社会を諷刺する作品としては大変よくできていると思う。