シェイクスピアを交えて即興で話を作るショー~ShakeItUP

 ジ・アザー・パレスのスタジオでShakeItUpを見てきた。数人の役者がお客さんから舞台になる場所、ジャンル、主人公の名前だけをもらって即興でシェイクスピア風な話を作るというものである。要所要所でシェイクスピアの台詞(あるいはそのパロディ)を入れることになっており、役者は使う台詞の抜き書きした紙片を何枚か服の腰のところに下げている。

 あまり期待していなかったのだがけっこう緊張感があって面白かった。第一幕は「サウスエンド=オン=シーを舞台にした史劇」というお題で、主人公はリチャード三世風な悪い企業家キースである。キースが兄であるサウスエンドの王ハロルドをだまし、バーキングの王との間にいざかいを起こして王座を狙おうとするという話なのだが、バーキングの王が吠えてイヌの真似をしたり(Barkingなので)、ハロルドの妻クラリッサが不倫スキャンダルでサウスエンドピアの鏡の家(海辺のリゾートによくある)に閉じ込められたり、まあけっこうめちゃくちゃである。

 第二幕は第一幕を奇跡的に生きのびたということになったクラリッサが出てくる「グラスゴーが舞台の喜劇」というお題で、クラリッサの息子ハロルドをめぐる2人の女性ビアンカとラヴィニアの恋のさや当て…なのだが、ケルヴィングローヴ美術館のキュレーターが実は魔術師で恋の魔法を使って悪事を企み、いろいろえらいことになる。最後はラヴィニアとビアンカが愛し合うようになってしまってハロルドを入れて3人で結婚し、寡婦のクラリッサはたまたま客席の最前列に座っていたポールさんと電撃結婚するというなかなかめちゃくちゃな結末になる。

 いろいろしっちゃかめっちゃかだが、笑えるところはたくさんある。各役者が腰に下げている台詞の紙片をランダムなタイミングで読み上げることでまとまりかけた話がまとまらなくなったり、話の方向が変わったりするのがポイントで、めちゃくちゃぶりはそのせい…なのだが、その都度役者の技術でカバーしてどうにかするのがけっこう緊張感があって楽しい。イギリスの役者の訓練にシェイクスピアがかなりしっかり組み込まれているからこういう即興ができるんだなと思ってちょっと感心した。