『ヴェノム:ザ・ラストダンス』を見てきた。これまでは脚本でこのシリーズにかかわってきたケリー・マーセルが監督である。
指名手配犯になってしまったエディ(トム・ハーディ)とヴェノムはニューヨークに向かう。ところがふたりは警察だけではなく、エディとヴェノムの共生の結果できた「コーデックス」なるものを狙っているヌル(アンディ・サーキス)と、レックス(チュイテル・イジョフォー)率いる特殊部隊にも追われることになってしまう。エディとヴェノムは車で家族旅行をしている宇宙人オタクのマーティン(リス・エヴァンズ)に拾ってもらい、目的地を目指すが…
話はこのシリーズらしく非常にゆるくて、これまでの『ヴェノム』シリーズと整合しないところがけっこうある(キャストからしてそうだし、ヴェノムの設定も第一作と齟齬がある)。典型的なマクガフィンであるコーデックスうんぬんの話はこんがらがりすぎで、もうちょっとシンプルな話にできるのでは…という気がする。さらに暗いところで展開するアクションなどはもうちょっと綺麗に撮れるのでは…とも思う。ただ、エディとヴェノムの友情描写や、マーティンをはじめとするムーン一家との交流、突然めちゃくちゃ強引に出てくる私のお気に入りキャラのチェンさん(ペギー・ルー)などが心温まる笑いを提供してくれるので、まあぬるいコメディとして見ればつまらない映画ではない。ラストダンスというだけあってちゃんとしたミュージカルシーンもある。
ひとつ気になったのがマーティンの役柄である。リス・エヴァンズが大変楽しそうにマーティン役を演じているのだが、こういう「他人に迷惑をかけなそうな陰謀論にだけハマっている善良なオタク」みたいなキャラクターは『ブルービートル』などにも出てきてだいたいイイ人である一方、ちょっとオタクの自己イメージとしてうーん…と思ってしまうところがある。この種の比較的無害な陰謀論にだけハマってすんでいる人は少なく、だんだん迷惑でディープなものにハマるのでは…と思うので、あまり現実感のないキャラクターである気がする。ヴェノムとかブルービートルみたいな話でリアリティをうんぬんしてもしょうがないというのはあるのだが、都合良いキャラとしてこういう陰謀論にハマってるけどイイ奴、みたいなのを出し過ぎではと思う。