新刊『学校では教えてくれないシェイクスピア』 をよろしくお願い申し上げます。

大変楽しかった~『エニシング・ゴーズ』(試写)

 松竹ブロードウェイ『エニシング・ゴーズ』を試写で見た。言わずと知れたコール・ポーター作曲(台本はP・Gウッドハウスとガイ・ボルトン)の有名ミュージカルの2021年の公演を撮影したものである。キャスリーン・マーシャル、ロス・マクギボン演出である。

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 ナイトクラブの人気歌姫リノ(サットン・フォスター)はウォールストリートの大物ホイットニー(ゲイリー・ウィルモット)のもとで働く若いビリー(サミュエル・エドワーズ)に気があるが、ビリーは名門の令嬢ホープ(ニコール=リリー・ベイズデン)に片思いしている。ホープが富裕なイギリス貴族オークリー卿(ヘイデン・オークリー)と婚約しており、結婚に備えて母親と豪華客船に乗ると知って密航しようとする。ひょんなことから犯罪者ムーンフェイス(ロバート・リンジー)と愛人アーマ(カール・メルセデス・ダイアー)を助けてしまったビリーは、2人の手引きで他人のふりをして船に乗り込むが…

 キャッチーな名曲が次々出てきて、ダンスに笑いにとにかく楽しいハチャメチャなロマコメである。オークリーの中国人の元カノが引き合いに出されるオチはかなりオリエンタリズムっぽくてそこが気になるのだが、3つのカップルがそれぞれ結ばれて多幸感のある終わり方になる。実質上の主役は若いビリーとホープカップルではなく、最初はビリーに惚れていたがだんだんオークリーに心惹かれていくリノで、歌も踊りも見せ場がたくさんある。

 コール・ポーターがゲイだったというのもあると思うのだが、なんとなくキャンプな感じがするところも多い。メガネを盗まれたホイットニーがホープの母エヴァンジェリン(フェリシティ・ケンダル)に求婚するつもりで勘違いして船員に求婚してしまい、船員に既婚者だからと断られ、噂を聞いたエヴァンジェリンが後で心配する…というくだりがあり、これはもとからそういう演出なのか今回そうしたのかはよくわからないのだが、みんな同性同士で結婚するのはおかしいと思っていないのが良い(ホイットニーは異性愛者なのに既婚者の同性に求婚したのが心配されている)。「エニシング・ゴーズ」はタイトルどおりちょっとクィアな感じがするハチャメチャな歌だし、元々は教会で伝道の仕事をしていたらしいリノが福音主義の礼拝と伝道をパロったみたいなナンバーで場を盛り上げるのもアメリカ的な風刺を感じさせる。